香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは10月8日、9月の米中首脳会談でトランプ大統領が習近平国家主席に対し、レアアースなどの対日輸出規制の撤回を求めたと報じた。日本からの部品・素材供給に依存する米国産業にも悪影響が及び、米中貿易休戦にも間接的に違反すると主張したという。習氏はこれに応じず、日本の軍国主義化への警戒を表明したとされる。
●トランプ氏への「打ち込み」成功
注目すべきは、米中首脳会談の直前に高市早苗首相がトランプ氏と会談して事前の「打ち込み」をしていたことだ。米中、日中関係では、台湾問題と共に中国によるレアアースの武器化が焦点だ。今回の報道は、高市首相による中国の対日輸出規制の説明がトランプ氏に「刺さった」ことをうかがわせる。米国が日本の問題を自国産業の利益に関わる問題として認識し、習氏に直接提起した意義は大きい。
中国はレアアースの輸出規制を、水道の蛇口の開け閉めのように使い分けている。米国には貿易交渉に応じて供給制限を緩める一方、日本には厳しい規制を続ける。日本を孤立させて圧力をかける戦略と読み取れる。会談でも習氏は、日中関係と米中関係を切り離すべきだとの立場を示したという。
同様な動きは外交面でも見られる。中国は国連憲章の旧敵国条項まで持ち出し、日本の軍国主義復活を警告している。第2次世界大戦で米中が共に日本と戦ったという歪んだ歴史認識を持ち出すことも、日米同盟にくさびを打ち込もうとする動きと解釈できる。経済と外交の両面で日米を分断して日本を孤立させる戦略だ。
これに対し、日本は中国の経済的威圧が日米共通のサプライチェーンを傷つけることを訴え、問題を日中二国間に封じ込めさせないことが重要だ。今回の米中、日米の首脳会談は、こうした外交の重要性を示している。
なぜこのタイミングで会談内容が報じられたのかは定かでないが、中国側の意図的なリークだとすれば、米国の要求に譲歩しない姿勢を示すとともに、日本の軍国主義化への警告を強調し、対日輸出規制を正当化する狙いも考えられる。
●日本は中国の主張の矛盾を突け
ここで日本が国際社会に訴えるべき重要な論点がある。中国は軍事転用防止を規制の理由に挙げ、民生用途には影響しないと説明してきた。しかし実際には、民生用レアアースの取引にも深刻な影響が生じている。
軍事転用防止のための輸出管理という名目自体は否定できない。だが、軍事用途と無関係な民生用取引まで妨げる合理的な理由にはならない。中国自身の説明と規制の実態との矛盾を問うべきだ。
日本政府はこれまで、日本狙い撃ちは「国際慣行に反する」との批判を繰り返してきた。しかし、それだけでは不十分だ。民生用途への深刻な影響を示し、実態は「軍事転用防止の名を借りた経済的威圧」であること、そして国際的なサプライチェーンを揺るがす脅威となっていることをもっと国際社会に訴えるべきだ。
今後、日米だけでなく欧州も含めて、いかに「共同対処」に持ち込むかが日本外交のカギになる。(了)




