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西岡力

【第1279回】北朝鮮がロシアの戦争に戦闘部隊7万増派

西岡力 / 2025.08.25 (月)


国基研企画委員兼研究員・麗澤大学特任教授 西岡力

 

 北朝鮮が7月から戦闘部隊7万人をロシアのウクライナ侵略戦争に追加派兵しているという情報を北朝鮮内部につながる信頼できる筋から入手した。増派された戦闘部隊はウクライナ領内でロシア軍が展開しているウクライナ軍との戦闘に参加している。同じ時期、北朝鮮の工兵部隊7万人、民間労働者6万人も追加派遣されたという。

 ●ウクライナ領内で初めて参戦
 同筋の情報によれば、北朝鮮軍戦闘部隊のそれまでの参戦は昨年10月に1万5000人、今年1月に2万人の合計3万5000人。ウクライナ軍が一部を占領したロシア西端のクルスク州に投入され、ロシアの同州奪還に大きく貢献した。ただし、韓国政府は北朝鮮の同州への派兵数を1万5000人とし、その後の派兵については言及していない。
 北朝鮮は派兵を昨年6月に締結された朝ロ戦略的パートナーシップ条約第4条の発動と位置づけている。第4条は「双方の一方が武力侵攻を受けて戦争の状況に置かれた場合、軍事的援助を提供する」と定めている。この条文を文字通り読むと、ウクライナ領内で続く戦争への参戦はできないことになる。現在まで北朝鮮とロシアは今年7月以降の参戦を認めていない。
 ロシアのショイグ安全保障会議書記が今年6月4日と17日、2回訪朝して最高指導者の金正恩氏と会談した。その時、ウクライナ領内での戦闘に北朝鮮軍7万人を参戦させることと、工兵部隊7万人、民間労働者6万人を送ることで合意したという。
 それを受けて7月頃から北朝鮮軍の戦闘部隊7万人、工兵部隊7万人が派遣された。戦闘部隊はウクライナ領内の全戦線で参戦しているが、逃亡や捕虜として捕獲されることを防ぐために、ウクライナ軍との近接戦闘よりも、後方でロシア軍に代わり砲兵、ドローン要員などとして作戦に加わっている。
 工兵部隊は私服で派遣され、現段階ではロシアのクルスク州やウクライナ東部のロシア占領地などで建設に従事しているが、いつでも軍服に着替えて戦闘に参戦できるという。
 北朝鮮は、戦争が長期化すればこれに加えて戦闘部隊3万人、工兵部隊3万人をさらに増派する準備をしている。

 ●長期戦支える北朝鮮
 ウクライナ軍情報局は7月初めNHKに、北朝鮮が今後、2万5000~3万人の兵士を追加で派遣するという分析を表明していたが、私の得た情報はそれよりはるかに多い。プーチン・ロシア大統領がウクライナ和平をめぐるトランプ米大統領との交渉で強気の姿勢を崩さない背景には、北朝鮮がロシア軍兵士の不足を大規模な派兵で補い、砲弾やミサイルを大量にロシアに提供し、最近ではドローンの生産まで始めて、ロシア軍を支えていることがある。(了)