9月14日、中部電力耐震評価不正に関する調査委員会の報告書が公開された。結語において、データ改ざんの具体的指摘に加え、原子力規制委員会が仮想の震源断層の上端の深さを5キロと浅いところに設定することを要求したと明記され、過剰規制が示唆された。
つまり、規制委の強引な要求が原因となり、耐震設計の基準となる地震の揺れが極端に大きくなったために、中部電力が許されざる不正に手を染めたという構図がこの報告書から読み取れる。
●過剰規制の弊害
原子力規制委の過剰な要求に対し、中部電力が抗議をしたが、規制委は聞く耳を持たなかった。この要求の適否を公開で議論すべきであったが、規制委の権限が強すぎて、事業者は対等な議論ができない。筆者は「審査を遅らせる」との恫喝を受けたと何度も耳にした。
米国原子力規制委(NRC)には、事業者との対等な議論を是とし、互いが知恵を出し合って原子力発電所の安全性を高める文化がある。原子炉安全諮問委員会(ACRS)という専門家組織があり、NRCの委員に助言する。また、NRCの原子力行政を監視する内部組織があり、連邦議会も過剰規制がないか監視している。適切な規制こそが、原発の安全性を高め、安価な電気を安定的に供給でき、国民を幸せにするからだ。
一方、我が国の原子力規制委の過剰規制は枚挙に暇がない。例えば、安全審査で耐震設計の基準となる地震の揺れを極端に大きくしたため、全国の発電所で免震建屋を設計できなくなった。元福島第一原発事故調査委員会(国会事故調)委員長の黒川清氏が怒っていた。福島第一原発で活躍した免震重要棟は建設中止となり、免震機能のない重要棟の中で強い地震時には、よろけながら緊急対応をしなければならなくなった。
次に、活断層の審査でいわゆる「悪魔の証明」(ないことの証明)を求めるガイドラインにより、日本原子力発電の敦賀発電所2号機の安全審査は不合格となった。規制委の石渡明委員(当時)が「活断層である可能性がないことを証明できない」と主張したためだ。
さらに、2種類の火災検知器を火の気のない部屋も含めて全室に設置させた。一つの原発につき、多いところで3000個に及ぶ。検知器からの信号は、ケーブルで中央制御室に送られるため、分厚い鉄筋コンクリートの壁をガンドリルで穴だらけにしなければならず、耐震性と放射線遮へい性が劣化した。
●規制委を「八条委員会」に戻せ
原子力規制委は独立性の高い「三条委員会」(国家行政組織法第3条に基づき設置される委員会)であるため、内閣の指揮命令系統の外にある。原子力の最大限の活用という政府の方針とも整合性が取れない状態が続いている。行政手続き法に定められた概ね2年の審査期間も順守できていない。国際原子力機関(IAEA)から指摘されたように、原発の専門家もいない。規制委を抜本的に改革し、国家行政組織法第8条に基づく「八条委員会」に戻すべきである。(了)




