中国政府がTBS系列で放送中の人気テレビドラマ「VIVANT(ヴィヴァン)」に圧力をかけている。同ドラマはフィクションの娯楽作品だ。中国外務省の郭嘉昆報道官は10月29日の会見で「文化コンテンツを通じて中国をあしざまに描いて中傷し、嫌中感情を拡散することを企てる勢力が日本国内に常に存在することをまたさらけ出した」と批判した。
●フィクションを「高市叩き」に利用
7月26日からスタートしたVIVANT第2部では自衛隊と中国系、双方の架空の諜報組織が戦いを繰り広げる。その架空の物語に対して中国側は、10月25日の国営中国中央テレビ(CCTV)を皮切りに官製メディアや在大阪中国総領事館などが一斉に批判を展開した。中国の官製メディアは10月4日放送の中国系組織員が自衛隊諜報員に拷問を行う場面を問題視したが、20日あまり後になってから政治問題化させていることになる。なぜか。
中国側はVIVANTを、高市早苗首相への批判に結びつける意図を隠していない。CCTVの国際放送部門であるCGTN日本語版は26日、X(旧ツイッター)に長文を投稿した。この中で、「右翼政治家が唱えてきた『中国敵視』を、一般国民の感覚に浸透させかねないこの『インチキドラマ』」と番組を罵倒し、高市政権の一年を「暴走」と論評している。さらに29日には「新型軍国主義が日本の文化芸能界を『毒化』することを警戒せよ」として、「(番組を)多くの日本の大手企業が商業面で支え、高市早苗氏が公に名指しして推薦」とも述べた。高市首相は14日の衆院予算委員会で、録画したものを年末と正月にまとめ見できればいい、と述べただけだ。つまり中国はフィクション作品を「高市叩き」に利用して攪乱しているのだ。
●「表現の自由」を守れ
中国の現実はフィクションより凄まじい。チベットやウイグル、モンゴルの人々を弾圧し、日常的に検閲を行い、荒唐無稽な抗日ドラマで数十年にわたり自国民を「教育」してきた。
近年、中国は他国をも「教育」するために中国マネーの引き揚げ圧力を使ってきた。これに屈した多数の日米欧の企業が中国に謝罪し、自主規制にも走ってきた。あのハリウッドも同様である。中国は、徐々に他国の「表現の自由」を削り取っているのだ。
サンリオは10月29日、中国からの名指し批判を受けてVIVANTとのコラボレーション(関連グッズの制作と販売)の中止を発表、謝罪した。中国側は同ドラマの出演者や監督、スポンサーを名指しで非難し、主演俳優が司会を務める予定のNHK紅白歌合戦にも言及するなど圧力を強めている。
中国の「越境検閲」による国内番組の改変や、自主規制があってはならない。日本の「表現の自由」を守らなければ、権威主義国の価値観に侵食され、自由も消えていくだろう。日本のエンターテイメント業界はハリウッドの二の舞いを演じてはならない。(了)




