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櫻井よしこ

【第613回・特別版】萩生田氏批判の背景に「戦後病」

櫻井よしこ / 2019.08.05 (月)


国基研理事長 櫻井よしこ

 

 7月26日、私の主宰するインターネット番組「言論テレビ」に自民党幹事長代行の萩生田光一氏が出演した。
 30日の朝日新聞で大久保貴裕記者が「(萩生田氏は)憲法改正の議論加速を図る『憲法改正シフト』の布陣を敷く文脈で大島理森衆院議長の交代論に言及した」「政権幹部は…『議長の人事に口を出すなど処分ものだ』と怒りをあらわにした」などと報じた。
 また、萩生田氏が「改憲議論の加速でアクセルを踏んでいる安倍晋三首相の側近」だけに、その発言に「与野党に波紋が広がっている」とも報じた。
 
 ●的外れなバッシング
 だが、番組で議長交代論を語ったのは萩生田氏ではない。同席した政治ジャーナリストの石橋文登氏である。萩生田氏は議長職の重要性とその役割を解説したにすぎず、朝日の批判は的外れだ。
 番組では、萩生田氏は改憲論議でアクセルを踏むどころか、非常に柔軟かつ穏やかに対応する姿勢を見せた。参院選挙で自民、公明の与党と日本維新の会など憲法改正に前向きとされる勢力の議席が改憲発議に必要な3分の2に4議席足りない結果になった件でも、「51対49」というような際どい決め方はしない、各政党、政治家と広く議論してまとめたいと語っている。
 日本共産党の小池晃書記局長が「議会制民主主義の根本をひっくり返すような発言だ」と「反発した」と朝日は報じたが、萩生田氏の柔軟路線は小池氏の論難の対極にある。
 
 ●改憲論議を忌避するな
 にも拘わらず、萩生田批判はなぜ起きたのか。メディアだけでなく与党政治家までもが事実と離れた報道に乗せられる形で批判する背景に、日本の「戦後病」があるだろう。
 激変する国際情勢の中で、いまわが国は日米同盟を基本に、外交、安全保障上の自立度を高める時だ。安倍晋三首相の重要課題のひとつは間違いなく憲法改正である。
 しかし、わが国には憲法改正も日本の自立も是としない戦後病の人々が少なからず存在する。朝日の萩生田批判に同調する自民党重鎮の伊吹文明元衆院議長、石破茂元防衛相や、野党第1党、立憲民主党の辻元清美国対委員長らはその代表か。
 彼らに問いたいのは、一体全体、彼らは番組を実際に見たのか、である。前述のように、見たのであれば萩生田批判は成立しない。第二に、見たうえでの批判なら、それは即ち石橋氏の指摘した議長交代、即ち憲法改正議論を進めることへの忌避感ではないか。
 日本の守りを米国に一方的に頼ることで「平和」を念ずる皮相な安全保障論に逃げ込む人々の思いが、萩生田批判となってはじけたのが今回の問題の本質であろう。(了)