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島田洋一

【第135回】極めて深い「ハトヤマ」日本への侮蔑の念

島田洋一 / 2012.04.02 (月)


国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一

3月下旬に米国の首都ワシントンを訪れ、約10日間、有力議員の外交政策スタッフや北朝鮮・中国問題の専門家らと意見交換を行った。彼らが一様に、最も強く失笑と侮蔑を露わにしたのは、北朝鮮の金正恩にでもイランの神権政治家に対してでもなく、「ハトヤマ」という名を口にする時であった。無定見・無責任・軽薄を極めた「ハトヤマ」的政治から日本が訣別できねば、遠からず日本人全体が侮蔑と失笑の対象になるだろう。

ライス=ヒル外交と現在の類似
2005年9月、ブッシュ政権は北朝鮮の犯罪資金洗浄に深く関わっていたマカオの金融機関バンコ・デルタ・アジアに金融制裁(戦略的法執行)を発動し、同時に中国銀行(中国4大商業銀行の一つ)を次の潜在標的とメディアにリークすることで、見せしめ効果を高めた。金正日体制を相当追い詰めた金融制裁は、しかし、宥和政策に空想的期待を抱いたライス国務長官とヒル国務次官補の主導で、1年余り後に解除される。ブッシュ政権最大の失敗であった。

問題は、当時と今の状況が似ていると何人もの外交専門家が指摘したことだ。戦略的法執行実施の中心人物によれば、チェイニー副大統領らは金融制裁解除に反対したが、イラク情勢が混迷する中、北朝鮮まで急変事態となれば手に余るとハドリー安全保障担当大統領補佐官らもライス=ヒル側に付き、流れが決まってしまったという。

イランの核問題で中東が緊迫する中、北朝鮮には取りあえず宥和的にという発想が、今またオバマ政権内で強まりつつあるように思われる。

「ハトヤマ」政治を引きずる日本は無視
イランの核の脅威を最も受けるイスラエルは、先制攻撃も辞さずとの構えを強めている。一方、北朝鮮の核の脅威を最も受ける日本は、政府が憲法上可能とする敵基地攻撃力の整備に乗り出すでもなく、専守防衛の殻に閉じこもっている。まず中東に全神経と能力を集中させ、北朝鮮は後回しと米側が考えても何ら不思議はないだろう。

上院軍事委員会の有力者で対北強硬派のインホフ上院議員(共和)のスタッフによれば、同議員は13年掛けてようやく組み立てられた在日米軍基地再編合意を鳩山由紀夫政権が「反故にした」ことに憤っており、「普天間問題が解決されるまで、日本の議員たちと打ち解けて将来を語り合う気にはなれない」と述べているという。韓国は米軍基地の移転や海軍基地の新設に反対派を排除しつつ乗り出した、なぜ日本は手をこまねくばかりなのかと慨嘆した外交専門家もいた。

ライス=ヒル路線を強く批判し、北朝鮮による拉致問題にも理解の深いロスレーティネン下院外交委員長(共和)は、5月に予定する東アジア訪問に際し、台湾、韓国は回るが日本には寄らずに帰る予定という。スタッフは「招待がないので」と言葉を濁したが、昨年、拉致担当相名で日本政府は正式の招待状を出している。日本への不快感の表明、あるいは少なくとも日本を重視しても仕方がないとの気分の表れではないか。

「ハトヤマ」政治を乗り越えられず、リーダーシップが見えない日本は、ますます無視されていくだろう。(了)

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第135回:極めて深い「ハトヤマ」日本への侮蔑の念(島田洋一)