公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

大岩雄次郎

【第70回】「強い社会保障」が財政を破綻させる

大岩雄次郎 / 2010.12.27 (月)


国基研企画委員・東京国際大学教授 大岩雄次郎

政府が24日に閣議決定した平成23年度予算案は、相変わらず根本的な問題への取り組みを回避した結果、借金を先送りし、数字の辻褄つじつま合わせに終始した。経済成長を促す実効的な政策はほとんど見当たらず、バラマキ政策の拡大による社会保障関係費の肥大のみが突出した政策は、すでに破綻の危険水域に入った国家財政を一層の危機に陥れる。日本経済の再生には、経済成長への不断の努力が必要であるのは言うまでもないが、まず支出構造の抜本的な改革が不可欠である。その上での消費税引き上げ論議が本来の意味を持つ。

増税と経済成長だけで財政は再建できない
政府の消費税引き上げ論の意図は、単に予算編成の目的である。しかし、今年度のように40兆円規模の資金調達を増税で賄うとすれば、地方交付税交付金等を差し引くと、消費税を約25%から30%前後まで引き上げる必要がある(消費税1%で税収約2.5兆円と仮定)。それでも、約900兆円に及ぶ過去のストックである国全体の長期債務(借金)は減ることはない。当該年度の財政赤字は解消するが、その後も過年度分の利払いや借り換えは残る。社会保障費など支出面の見直しなしに、増税での問題解決は非現実的である。

また、景気が回復し経済成長が軌道に乗れば、税収も回復するが、同時に金利も上昇する。来年度の国債の新規発行分と借換債の合計は約169兆円超に達する。今年2月の財務省の試算(平成23年度分)によると、経済成長率1%上昇で、税収1%増としても、税収増は4000億円程度、金利増は1.1兆円である。つまり、景気がよくなればよくなるほど金利は上昇し、財政収支は悪化する。歳出から国債費を除いた基礎的財政収支は改善するが、財政収支全体は悪化する。つまり、歳入だけでなく歳出の大胆な改革が必要なのである。

社会保障制度改革を断行せよ
わが国の未曽有の財政赤字を支えているのは豊富な家計貯蓄であるといわれるが、このままでは2020年代には政府債務が家計貯蓄を上回り、国債を消化できなくなると指摘されている。この財政危機の根底にあるのは少子高齢化に伴う社会保障費の急増であり、今後の家計貯蓄の急速な減少を考えれば、社会保障制度の根本的な改革なくして、わが国の財政危機の解消は不可能である。民主党の子ども手当等のバラマキ政策の拡大により、来年度予算では社会保障費は5.3%増の28.7兆円で、一般歳出の52%超に達する。

この財政赤字を負担するのは、まだ生まれていない将来世代である。内閣府経済社会総合研究所試算(2009年)によれば、将来世代の生涯の「純負担」は1億500万円であり、生涯所得に占める比率が0歳世代16.7%、20歳~60歳世代の8%、80歳以上では受益超に対して、51.4%に達する。

財政を立て直すためには、将来世代への財政赤字のツケ回しと現政権のバラマキ政策を直ちに止める必要がある。その上で消費税を含めた抜本的な税制改革を断行する覚悟が政治にも国民にも求められる。その実現のためのリーダーシップを発揮するのが本来の政府の責務である。(了)

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第70回:「強い社会保障」が財政を破綻させる(大岩雄次郎)