公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

ブラーマ チェラニー

【第69回】日印協力で中国の横暴を抑えよう

ブラーマ チェラニー / 2010.12.20 (月)


インド政策研究センター教授 ブラーマ・チェラニー

アジアの緊張高めた声高の主張
急速に台頭するアジアは世界の地政学的変化の中心となった。今や、アジア諸国の政策と挑戦が国際的な経済環境と安全保障環境の形成に一役買っている。しかし、2010年は、中国が近隣諸国との領土紛争を拡大して緊張を高め、声高の主張をした年として記憶されるだろう。もっと言えば、2010年は、中国指導部が拡張する中国への恐怖心をあおり、アジアの表舞台への米国の復帰を促すことで、中国の国益を損ねた年だった。

中国の力の増大に伴い、アジアでは多くの国が二国間ベースで安保協力関係の構築に乗り出した。この協力関係は、中国の行動に好ましい影響を及ぼして、中国が越えてはならない一線を越えたり、自ら唱えてきた「平和的台頭」に反する行動を取ったりすることのないようにしたいという、内に秘めた願望を反映するものである。

しかし、パートナーシップを真に構築するには時間がかかる。例えば、米国は近年、インドを条約上の義務のない「緩やかな同盟関係」に組み込む努力を傾けてきた。それでも、利害対立がしばしば浮上する。

米国はベトナムにも秋波を送っている。だが、冷戦の遺産はベトナムの思考に引き続き重くのしかかる。ベトナムは中国へのヘッジ(保険)として米国に接近するものの、ベトナム指導者の中には、米国がベトナムの体制転換に今なお執着しているのではないかと心配する者もいる。

日印米ロの結束は北京の悪夢
中国、インド、日本の戦略的三角関係で、中国は対印関係が悪化すれば対日関係を改善することでバランスを図ろうとする。逆に、21世紀の最初の10年間のように、対日関係が悪化すれば対印関係の改善を図る。この3国を三角形の各辺に例えると、短い二つの辺(インドと日本)を足せば、常に長い辺(中国)より長くなる。今日のアジアで、最も急速に拡大しつつあると思われるのが日印関係であることは驚くに当たらない。

日印中の3国に米国を加えた四角関係で、日本とインドと米国が緊密に協力すれば中国の選択肢は限られる。ロシアを加えた五角関係では、中国はのっぴきならない状況に陥る。日本とインドとロシアが米国の手を借りて結束すれば、中国中心のアジアが出現する見通しが消えるばかりか、中国にとって究極の戦略的悪夢となる。

しかし、最近の動きが示すように、日ロの和解はなお遠い。米中はぎくしゃくした関係を続けそうだが、あからさまな対立はどちらも好まない。米国にとって、中国の力の増大は、アジアにおける米軍の前方展開の正当化に役立つのだ。また、中国ファクターは、米国が既存の同盟国をつなぎ止め、新たな同盟国を引き寄せて、アジアでの戦略的足跡を拡張するのにも役立つ。

こうした戦略的背景の下で、アジアでは、主要国の力関係は流動的状況が続きそうだ。(了)

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第69回:日印協力で中国の横暴を抑えよう(ブラーマ・チェラニー)