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岩田清文

【第1396回】ロシアの暴挙にウクライナ支援で応えよ

岩田清文 / 2026.08.24 (月)


国基研副理事長・元陸上幕僚長 岩田清文

 

 8月13日、ロシアのプーチン大統領は日本の北方領土の択捉島に上陸した。ロシア大統領の同島上陸は初めてである。
 その前日、プーチン氏は13年ぶりにサハリン州を訪れ、「(北方領土の地位は)第2次世界大戦の結果として国際文書に明記された」と述べ、領土問題の「解決済み」を強調した。同時期に行われていたロシア太平洋艦隊の大規模演習を視察したプーチン氏に、リイナ太平洋艦隊司令官は「敵対国の船舶を臨検し拘束する準備が整った」と、艦隊の任務拡大を示す報告を行った。

 ●形骸化した言葉による抗議
 大統領の択捉島上陸と太平洋艦隊の任務拡大は偶然の重なりではない。旧ソ連による日ソ中立条約違反の参戦と終戦後の不法占拠を正当化し、北方領土問題を巡る対話の余地を一方的に断つ暴挙である。
 わが国の主権と国民感情を公然と踏みにじるこの動きに対し、日本政府の対応は、茂木敏光外相の「強く抗議した」、高市早苗首相の「断じて許容できない」という言葉に留まる。2010年のメドベージェフ大統領(当時)による国後島訪問以来、抗議は繰り返されてきたが、ロシアの姿勢が変化したためしはない。従来の「言葉による抗議」から「行動による抑止」への転換が必要である。

 ●効果的な防空ミサイル供与
 わが国が取り得る実効的な対露カードは限られるが、最も効果的なのは、ロシアが痛みを感じること、すなわちウクライナへの防空装備・技術支援である。ロシアが7月に発射した弾道ミサイル195発のうち、ウクライナが迎撃できたのは15%の29発に過ぎず、重要インフラと都市の防空は崩壊の危機に瀕している。
 ウクライナが死活的に必要とするパトリオット防空ミサイル最新型のPAC-3は、米国が7月に供与を再開したものの必要量には遠く及ばず、生産ライセンスの付与には応じていない。日本はこのPAC-3を米国のライセンスの下で生産しており、米国の了解とブラックボックス(技術非公開)とされる「シーカー(誘導部)」など最重要部品の提供を受ければ、ウクライナへの供与が可能となる。直接供与が困難なら北大西洋条約機構(NATO)経由も現実的な方法である。
 さらに、防空ミサイルやドローン対策装備の日本・ウクライナ共同開発も有効である。実戦で鍛え抜かれたウクライナのドローン技術・経験と、日本の高度なセンサー・誘導技術の融合は、防空網の低コスト・大量生産を可能にし、わが国自身の南西諸島等の防衛力強化にも直結する「相互利益」となる。小泉進次郎防衛相も筆者に対し、その必要性を認めている。

 ●「刺激しない」外交を捨てよ
 政府内には対露関係の悪化を懸念する声があるという。だが「ロシアを刺激しない」という発想は、かつての「中国を刺激しない」外交の苦い失敗を繰り返すことにほかならない。ロシアが痛みを感じてこそ、北方領土問題の対話の扉は開かれる。行動には行動で応える構えなくして、相手は動かない。(了)