公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

石川弘修

【第229回】日本の立場を守るのは日本人自身だ

石川弘修 / 2014.01.14 (火)


国基研企画委員・ジャーナリスト 石川弘修

 

 先月発行された祥伝社新書「英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄」(ヘンリー・S・ストークス著)が好評を博し、発売1か月で早くも4刷りと増刷を重ねている。戦勝国によって強いられた歪んだ歴史観を正しているのが日本人ではなく、米ニューヨーク・タイムズ紙などの東京支局長を務めたベテラン英国人ジャーナリストであることが強い関心を呼んだのであろう。

 ●英人記者が戦勝史観を排撃
 氏は東京オリンピック開催の1964年、英フィナンシャル・タイムズ紙の初代東京支局長として初来日。以来、日本在住50年、外国特派員協会でも最古参となった。当時は東京裁判(極東国際軍事裁判)の「日本=戦争犯罪国家論」や「南京大虐殺」の発生を単純に信じ、何らの疑いもなかった。だが、20世紀の日本とアジアの歴史を俯瞰したとき、そうした見方が大きな誤りであることに気付いた。
 作家の三島由紀夫氏と親交を得たことも大きかったという。例えば、①先の大戦は日本の安全保障のための自衛戦争だった(マッカーサー連合国軍最高司令官の議会証言)②日本国憲法は日本を弱体化し、二度と戦争を起こすことが出来ない国にする降伏条約だ③日本が自国の歴史と伝統のうえに立って自主憲法を制定し、国軍を持たなくては日本が独立国家となることなどあり得ない―と氏は断言する。

 ●戦死者の崇敬は国家の義務
 ストークス氏は日本人の夫人ら家族と共に毎年のように靖国神社に参拝、戦争中行方不明になった義母の兄の霊の安らかならんことを祈っている。戦後、占領軍には靖国神社を軍国主義の象徴として焼き払うという意見もあったが、マッカーサー元帥に対しローマ法王庁駐日臨時代表ブルーノ・ビッテル神父が「戦勝国か敗戦国かを問わず、国家のために命を捧げた人に敬意を払うのは自然の法であり、国家にとって義務であり、権利でもある」と助言したため、神社は難を逃れた。同神社の境内にビッテル神父の像を建てれば、米国、カナダ、オーストラリアや、欧州諸国などキリスト教圏で、靖国神社がよく理解されるだろう、と氏は提言する。
 「慰安婦問題など歴史問題のほとんどは、日本人側から中国や韓国に嗾(けしか)けて問題としてもらったのが事実だ」。氏はさらに次のように言う。
 「日本は相手の都合を慮(おもんばか)ったり、阿諛追従(あゆついしょう)する必要はない。アメリカはアメリカの立場で、中国は中国の立場で、日本は日本の立場でものを言う。当然それらは食い違う。だが、それでいいのだ。世界とはそういうものである。日本だけが物わかりのいい顔をしていたら、たちまち付け込まれてしまう。日本以外に誰が日本の立場を守ってくれるだろうか」
 ストークス氏の著書が英語でも刊行され、世界で幅広く読まれることを切に願う。(了)