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今週の直言

洪熒

【第41回】李政権の自滅で終わった韓国地方選

洪熒 / 2010.06.07 (月)


国基研客員研究員・統一日報論説委員 洪熒ホンヒョン

鳩山由紀夫首相が辞任を発表した6月2日、韓国でも「政変」があった。李明博政権への中間評価とも言える統一地方選挙で、与党のハンナラ党が惨敗したのだ。もう少しで、ソウル市長のポストまで野党の韓明淑・元首相に明け渡すところだった。政党が選挙で負けるのはよくあることだから、与党の敗北自体は「政変」と言えない。では、なぜ「政変」と言ったのか。常識的には起こり得ないことが起き、その意味することが重大であるためだ。

親北の中心人物が堂々当選
周知の通り、今回の選挙は韓国にとって海軍哨戒艦「天安」が金正日政権の魚雷奇襲攻撃で爆沈された未曾有の安全保障上の危機の中で行われた。韓国政府が天安を爆沈させた北韓(北朝鮮)産重魚雷CHT-02Dの破片を公開したのは投票のわずか2週間前だった。国際社会が金正日政権の侵略行為を糾弾し、李大統領の強硬な対北措置を支持する中で行われた選挙だった。

だが、結果は親北路線の野党の勝利となった。特に、ちょうど1年前に自殺した盧武鉉前大統領の路線を継承すると誓った、「486世代」と言われた「主思派」(北の主体チュチェ思想派)の中心人物(李光宰江原道知事、安煕正忠南道知事、宋永吉仁川市長ら)が堂々と当選した。衝撃的なことは、これら主思派勢力は政治資金法違反で有罪になったり、北韓に「平和的核利用権」を保障するよう唱えたりした前歴があるのに当選した点だ。こんな非常識な結果を招いた責任は有権者にも問わねばならない。

望まれる健全保守政党の出現
天安爆沈事件で一貫して北をかばってきた親北勢力と野党は、金正日政権の仕業であることが証明されるや、絶望的な自暴自棄の心情からか、投票の1週間前から、李大統領とハンナラ党の強硬方針は戦争を招くというキャンペーンに出た。だが、信じられないことに、李大統領とハンナラ党はこのとんでもない反逆的キャンペーンに全く反論しなかった。

ハンナラ党は、候補選びから情実や私利による天下りの公認が問題になり、地域や有権者の反感を無視したから、自業自得というより自滅である。特に、金正日政権と連動した親北勢力・野党の謀略と扇動に対して一言の反駁すらしなかったハンナラ党は政党とも言えなくなった。常識的な有権者と健全な保守勢力を代弁する政党の出現なしに、韓国の未来はない。(了)

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第41回:李政権の自滅で終わった韓国地方選(洪熒)