国基研理事・拓殖大学教授 遠藤浩一
民主党が「マニフェスト」(政権公約)を安易につくり、安易に反故にしたせゐで、この言葉に負のイメージが付いてしまつた。で、今度は「アジェンダ」(行動計画)が流行の兆しを見せてゐるのださうな。また横文字といふのは気に入らないが、政党や政治家が、その政策や行動に関する真剣な約束を求められてゐるといふ本質に変はりはない。
「みんなの党」は疑似民主党?
民主党への期待が雲散霧消する中で行はれる参院選の争点は「反民主の真贋」になるものと思はれる。民主党から逃げ出す票を各党が奪ひ合ふわけだが、一歩リードしてゐると伝へられるのが「みんなの党」である。しかし、この党の政策を見ると「子育て手当を欧州並みに(2万円~3万円/人・月)。義務教育期間まで支給」だの「唯一の被爆国として『核廃絶』の先頭に立ち、『核軍縮』や『核不拡散』に主導的役割(を果たす)」だのと、思想も政策も民主党と酷似してゐる。つまり、民主党とほとんど中身が同じなのに「反民主」を打ち出して票を得ようとしてゐるわけだ。この党が選挙後、「反民主」の看板をさつさと下ろす可能性は低くない。
新党改革(舛添要一代表)が「反民主」であることは疑ひないが、理念・政策はもう一つ判然としない。「たちあがれ日本」(平沼赳夫代表)と「日本創新党」(山田宏党首)は思想的にも政策的にも共通する部分が少なくないやうに見える。先頃、国基研は平沼、山田両氏に加へて、保守系議員グループ「創生『日本』」会長の安倍晋三元首相を招いてシンポジウムを開催し、存念を聞いた(みんなの党と新党改革は呼び掛けたが不参加)。そこで明らかになつたのは、安全保障や国民教育、財政・経済政策などの基本政策について、三氏の見解が完全に一致してゐるといふ点であつた。
安倍、平沼、山田氏に共闘を期待
だつたら、安倍氏らも含めて「逞しく、自立した日本」を旗印に新党を作り、政界再編の核になつてほしいと、私などは切望するのだが、各党の事情もあつて直ちに合同とはいかないやうだ。しかし、このまま選挙を迎へれば反民主票は分散し、小政党の議席獲得は困難になることが予想される。それでは困る。
そんな中で、山田氏の「それぞれの立場で反民主戦線の『戦友』として闘ひたい」といふ一言が印象に残つた。ならばせめて「戦友」の間で、参院選後の政局も睨んで「反民主政権」樹立あるいは政界再編に向けた「行動計画(アジェンダ)」を打ち出してもらひたい。さうしてくれれば、有権者は参院選後を展望しつつ一票を投じることが可能となる。その中で「反民主」の真贋も、おのづと明らかになるだらう。 (了)
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第40回:「反民主・救国戦線」の行動計画(アジェンダ)を (遠藤浩一)