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本田悦朗

【第1255回】食料品の消費税をゼロにする財源はある

本田悦朗 / 2025.05.26 (月)


国基研企画委員・元内閣官房参与 本田悦朗

 

 食料品、エネルギー価格の上昇を主因に、総合物価指数が上昇率3%台半ばと高止まりしており、消費者の負担が大きくなっている。
 食料品の価格上昇は、食料自給率が低いことも相俟って、輸入価格上昇に伴う「コストプッシュ・インフレ」によるところが大きい。コストプッシュ・インフレは実質賃金の上昇が遅れている現状では、国民生活を苦しめる一方、消費税収入の増加を国庫にもたらし、財政が改善する。
 つまり、最近高騰する食料品にかかる消費税は、国民にとっては物価上昇と税の二重の負担となる一方、政府にとっては税収増のボーナスとなる。政府は、政策に対する国民の信頼を確保するためにも、取り過ぎた税金を国民に還元すべきである。

 ●経済成長で税収は増える
 ところが、自民党執行部は「財源がない」という理由で消費減税をかたくなに拒み続けている。しかし、財源は経済成長によって生まれるのである。
 食料品にかかる消費税率をゼロに引き下げると、約5兆円の財源が失われる。他方、税収は政策を誤らない限り、経済成長とともに増加する。今後、コストプッシュ・インフレは徐々に低下していくと予想されるが、需要に由来する「ディマンドプル・インフレ」は、2%の物価安定目標に近づいていく。その場合、2~3%の名目成長率、4~6%の税収増は十分に達成可能である。
 そうであれば、2025年度の税収が約78兆円と見積もられているので、2026年度は、3兆~4.5兆円の増収が期待できる。これが2年間続けば、5兆円の税収減は十分にカバーできる。いずれも一貫した成長重視の政策が継続されることが前提である。消費減税自体、成長のために重要である。
 2026年度は消費減税分をカバーしきれない可能性があるが、不足分は赤字国債発行を躊躇すべきでない。国債を増発すれば、財政規律が維持できないとする意見もあるが、名目成長率が国債の金利を上回っている限り、債務比率(政府の債務残高÷名目GDP)は収束するので、財政は改善を続ける。
 どうしても国債発行を避けたいなら、国の各種基金の余剰金や外国為替資金特別会計(外為特会)が管理する外国債の利子を一般会計に繰り入れる等、工夫する余地はある。

 ●現行「8%」は高すぎる
 我が国の食料品にかかる消費税率は8%と先進7カ国(G7)中、最も高い。食料は国民生活にとって最も根源的な必需品であるから、この税率は高すぎる。また、生活困窮度を測るエンゲル係数(消費支出に占める食費の割合)は、日本は28%超で、G7で最も高くなってしまった。我が国の中低所得者の生活は厳しいのである。政策は国民の真のニーズに応えるべきである。(了)