公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

有元隆志

【第1295回】高市自民新総裁に望むこと

有元隆志 / 2025.10.06 (月)


国基研企画委員・産経新聞特別記者 有元隆志

 

 自民党新総裁に高市早苗氏が選出された。このままでは保守政党としての存在意義が失われるとの党員の危機感が、国会議員票では劣勢に立たされていた高市氏を総裁に押し上げた。女性初の首相となるが、お祝いムードはない。むしろ高市氏本人が筆者にもらしたように「これからが本当の闘い」といえる。
自民党はなぜ昨秋の衆院選、今夏の参院選で大敗したのか。4日の総裁選決選投票前の演説で高市氏が述べたように、有権者には自民党が「暮らしの厳しさを分かっているのか」との不満が強く、「自民党の政策には夢がない」と見ている。
 石破茂首相は「熟議の国会」を掲げ、野党に配慮を示すあまりに、受け身の姿勢が目立った。野党の意見を聞くのは必要だが、首相として自らの考えを積極的に打ち出し、遂行していくことが高市氏には求められる。

 ●防衛の他者依存は戒めよ
 総裁選では、日本を取り巻く厳しい安全保障環境について、高市氏も含めて突っ込んだ議論にはならなかった。それでも政府の有識者会議が9月に提出した提言で「早急に我が国の抑止力・対処力を更に強化すための取組を検討し、進めていくべき」と記したように、やることははっきりしている。この点は高市氏も著書『国力研究』(産経新聞出版)の中で「『行き過ぎた他者依存』は厳に戒めるべきであり、『我が国自身の防衛力』を不断に強化することが必要不可欠だ」と明確に書いており、その実現を図ってほしい。
 防衛力強化の前提として自衛隊の憲法明記は欠かせない。岸田文雄、石破茂両政権は「党是」である憲法改正について「国民に選択肢を示すのは政治の責任」(岸田氏)「精力的に取り組む」(石破氏)などと口では意欲を見せながら熱意に欠けた。
 挙げ句の果てには、衆院では憲法改正に前向きな改憲勢力が国会発議に必要な総定数の「3分の2」を割り込んだ。改憲機運は後退しているが、高市氏は総裁選で述べたように、自衛隊明記に向けた「憲法9条改正」に最優先で取り組むべきだ。

 ●皇位継承問題の決着を
 石破政権で先送りとなった皇統の安定的な継承に向け、男系継承を守る政府報告書の実現にも党総裁として指導力を発揮してほしい。
 高市氏は『国力研究』でこう書いている。
 「しっかりと現実を直視した上で一刻も早く必要な備えを講じるとともに、今を生きる日本人と未来を生きる日本人のためにも、多様な分野において果敢に挑戦を続けていくべきだ」
 高市氏は首相として、その先頭に立つべき時が来たのだ。(了)