公明党が10日の党首会談で自民党との連立解消を通告した。26年間続いた自公連携は幕を閉じた。安倍晋三政権などで政治の安定をもたらした自公連立だが、マイナス面として顕著なのは、公明党があまりにも中国に配慮していたことだ。
●中国への遠慮
公明党と支持母体の創価学会は、日中国交回復に尽力した経緯から日中友好を唱えてきた。中国における人権状況に国際社会から非難が強まるなかで、公明党も「懸念を共有している」としながらも、実際の行動は違った。中国の内モンゴル、新疆ウイグル、チベット各自治区と香港などの人権状況をめぐって、衆参両院は2022年、政府に対して事実関係に関する情報収集と包括的な施策の実施を求める「人権状況決議」を採択した。だが、公明党の賛同を得るため、採択された決議に「中国」「非難」「人権侵害」といった文言を明記することは見送られた。
内モンゴルの人権問題に取り組む議員連盟の会長として活動してきたのが自民党の高市早苗総裁だ。高市氏が首相になると、中国との関係が悪化すると懸念する公明党の立場ばかりが報道されているが、人権問題に取り組んできた高市氏に立ちはだかってきたのが公明党なのである。公明党の政権離脱でもはや気兼ねする必要はなくなった。高市氏は中国の人権問題に欧米と歩調を合わせ取り組んでほしい。
●憲法9条2項
憲法改正も同様である。自民党は立党以来、「自主憲法制定」を党是に掲げてきた。中でも安倍元首相は憲法改正に熱心だった。その安倍元首相が憲法施行70年にあたる2017年5月3日、「陸海空軍その他の戦力は保持しない」と定めた憲法9条2項を維持し、自衛隊の存在を明記する条文を設けることを提案したのは党内外に衝撃を与えた。憲法改正に慎重な公明党の理解を得るために、あえて持論を取り下げたのだった。
日本維新の会は9月に、9条2項削除を盛り込んだ政策提言を発表した。高市氏は2005年と12年に自民党が作成した9条2項削除の改憲案に立ち返り、維新などと連携すべきだ。2項削除により集団的自衛権が全面的に認められるようになれば、日米同盟を双務的に発展させることができる。
●鋼の女
高市氏は公明党の政権離脱によって試練に直面しているが、本人はピンチをチャンスととらえているようだ。尊敬するサッチャー元英首相のあだ名「鉄の女」ではなく、「鋼の女」になるとの決意を筆者に示した。鋼は鉄よりも強度と靭性と呼ばれる「粘り強さ」が優れているという。その心意気で前に向かって進んでほしい。(了)




