公益財団法人 国家基本問題研究所
https://jinf.jp/

今週の直言

奈良林直

【第1337回】浜岡原発の不祥事で規制委改革も必要

奈良林直 / 2026.01.19 (月)


国基研理事・東京科学大学特定教授 奈良林 直

 

 中部電力の浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の安全審査をめぐり、中部電力が想定される地震の揺れ(基準地震動)を過小評価していた可能性が発覚し、原子力規制委員会は意図的な不正が行われた可能性があるとして、浜岡原発の安全審査を停止することを宣言した。基準地震動はすべての耐震設計の基準になるもので、この信頼性が担保できないのだから、数年間かかった耐震解析とその審査が全てやり直しになるのはやむを得ない。

 ●法が想定しない長期審査
 中部電力は、基準地震動の策定に使う地震波を選定する際、計算条件の異なる20組の地震動の平均に最も近い地震波を代表波に選ぶと規制委に説明していた。しかし、実際には20組のセットを多数作成し、その中から一つのセットの代表波を意図的に選んでいた。また、2018年ごろ以降は、平均に近くないものを代表波として選定した上で、その代表波が20組の地震動の平均に最も近くなるように残りの19組を選び、20組の地震動とその代表波のセットを作っていた。
 不正と断定されかねないこのような基準地震動の策定に対しては、有識者が参加して原発の耐震評価手法などの規格を策定している日本電気協会の耐震分科会などで、あらかじめ結果が分かっている複数の地盤のデータをコンピューターに入力して、計算結果と実際に観測された地震動を比較する「ベンチマーク解析」が必要である。
 浜岡原発のケースに関しては、規制委の側にも問題がある。行政手続法は、審査に当たって前提条件や解析手順をあらかじめ明示し、公平さ、透明性、国民の権利の保護を確保し、審査を概ね2年で終えるよう規定しており、審査中に審査の手順を変えてはならないとされる。規制委が毎回の審査会合で新たな課題を次々に追加したため、審査に15年もかかった発電所が複数ある。規制委も行政組織だが、東日本大震災による福島の原発事故から15年を経ても、行政手続法を順守していない。米国ではトランプ大統領が審査期間を2年から1年半に短縮するよう指示した。

 ●米国のAI活用に倣え
 筆者は先週、世界の原発事故を監視する「職業被ばく情報システム」(ISOE)の北米シンポジウムに参加したが、米国の原子力規制委員会(NRC)は人工知能(AI)を使って意図的な不正の有無などを確認する手法を開発しつつある。AIを使えば何万ページにおよぶ申請書を10分足らずでチェックできる。AIの活用で不正を見抜く審査の仕組みの構築が必要である。
 長い審査は、電力料金の高騰と生活弱者へのしわ寄せをもたらす。我が国もAIによる審査を導入すべきだ。筆者は日本保全学会で、規制委の事務局に当たる原子力規制庁との面談を通じてそれを提案しており、規制庁も前向きだ。(了)