米国とイランの和平協議は双方の隔たりが大きく、協議2日目の4月12日に中断した。戦略的パートナーである中国の支援を背に、イランは強気の姿勢を崩さない。中国は、イランのイスラム革命防衛隊によるホルムズ海峡航行船舶からの通航料徴収にも深く関わる。米国が和平を急ぐ余り、イランによる同海峡の管理を容認するようだと、習氏の思うつぼにはまる。
●背後に人民元決済拡大の野望
イランが徴収をもくろむ通航料は積み荷の原油1バレル当たり約1ドルで、200万バレル積載の超大型タンカー(VLCC)の場合、約200万ドル(約3.2億円)にもなる。ホルムズ海峡は平時の場合、一日当たり130隻以上の商船が通過するが、開戦後はペルシャ湾岸で約3000隻が足止め状態にあり、海峡通航は多くても一日数隻程度に減っている。イランは徴収案を押し通すと、海峡通航が平時に戻れば、一日当たり1900万ドル(約30.4億円)以上、年間で1.1兆円以上の収入を得る計算になる。戦争前から経済難に陥っているイランにとっては干天の慈雨となり、海峡支配権は譲れない。
通航料支払いは人民元または暗号通貨に限っている。イランの石油輸出の9割以上が中国向けで、人民元決済システムは整備済みだ。暗号通貨取引のデジタル決済ネットは中国がイランで敷設した通信システムを使うので、暗号通貨は人民元と同様、中国人民銀行が支配・管理する国際銀行間決済システム「CIPS」経由で香港に送金される。香港市場で暗号通貨は人民元、ドル、ユーロ、円などに換金できる。イランが海峡を支配すれば、日本、韓国、インドなど多くの国の航行船舶も人民元決済網に組み込まれる。
中国の習近平政権には、ペルシャ湾岸産油国に人民元決済を浸透させ、「ペトロダラー」と呼ばれる基軸通貨ドル体制を蚕食する狙いがある。習氏は今年2月、人民元の国際決済通貨化の大号令を発した。筆者が得た独自情報では、中国人民銀行は中東の石油輸出国に対し、元建てで石油取引する場合は国際相場より14%割高で輸入し、仲介業者には1%の手数料を払うと通告している。
●危ういトランプ氏の「ビジネス第一」
気がかりなのは、巨大な商機に引かれる傾向があるトランプ大統領の出方だ。米政府系の米国際開発金融公社(DFC)は海峡利用の船舶向けに最大200億ドル(約3.2兆円)の保険提供を発表済みだ。トランプ氏はイランとの通航料の共同徴収の考えを4月8日に表明し、翌日には引っ込めたが、人民元利権拡張を狙う習氏に付け入る隙を与えてはならないはずだ。(了)





