公益財団法人 国家基本問題研究所
https://jinf.jp/

今週の直言

  • HOME
  • 今週の直言
  • 【第1360回】反撃能力の配備、防衛省は説明を尽くせ
織田邦男

【第1360回】反撃能力の配備、防衛省は説明を尽くせ

織田邦男 / 2026.04.06 (月)


国基研企画委員・麗澤大学特別教授 織田邦男

 

 3月31日、防衛省は「25式地対艦誘導弾」(12式地対艦誘導弾能力向上型)を陸上自衛隊健軍駐屯地(熊本市)に、「25式高速滑空弾」(島嶼防衛用高速滑空弾)を陸自富士駐屯地(静岡県小山町)に配備した。反撃能力として初めて導入した装備であり、射程は約1000キロとされ、九州、沖縄からは北朝鮮、中国大陸沿岸部などが射程内に入る。
 反撃能力保有については、安全保障環境の悪化と兵器技術の進歩を受け、2022年、岸田政権下で決定された。反撃能力の初配備でもあり、メディアの過剰な報道ぶりも手伝って、地元住民の不安や反発を招いているといわれる。主な論点は四つで、問答形式で整理すると以下のようになる。
 
 ●戦争抑止に不可欠
 ―ミサイルが配備されるため、有事には真っ先に攻撃目標になるのではないか。
 これらのミサイルは移動式であり、有事には駐屯地外に展開して運用されるのが常である。また本土攻撃があるような場合、それは日本との全面戦争を意味し、攻撃目標は基地や都市などに限らない。そういう戦争を抑止するための装備である。
 ―中国や北朝鮮は核ミサイルを保有しており、抑止力足りえないのではないか。
 抑止力には「拒否的抑止」(期待通りの成果を上げることが難しいと思わせて行動を思いとどまらせる)と「懲罰的抑止」(与える被害と同等もしくはそれ以上の被害を受けると思わせて行動を思いとどまらせる)がある。ミサイル防衛と反撃能力を組み合わせることで「拒否的抑止」効果を高め、米軍による「懲罰的抑止」と相まって抑止力の向上を図るものである。
 ―専守防衛を逸脱するのではないか。
 専守防衛とは、攻撃能力を一切保有せず守りに徹するという意味ではない。「相手から武力攻撃を受けた時、はじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための最小限にとどめ、また保持する防衛力も自衛のための最小限のものに限るものである」(防衛白書)。近年のミサイル技術の進歩や飽和攻撃など戦術能力の向上により、既存のミサイル防衛網だけで防衛することは困難になりつつあり、反撃能力は必要不可欠である。
 ―射程1000キロは長すぎるのではないか。
 相手の射程圏外から攻撃できるスタンドオフ性は古来、兵器に求められる不可欠な要素である。現代兵器の趨勢から、1000キロ程度の射程は最小限の能力といえる。
 
 ●住民の不安払拭を
 今更ながらの議論が惹起されているが、国民の理解あっての防衛力である。防衛省は、事前説明が欠如しているという指摘に真摯に向き合い、住民への説明を尽くし、可能な限り不安を払拭すべきである。(了)