中国人民解放軍のロケット軍では2023年に司令官と政治委員の解任が明らかになって以降、同軍や装備調達部門の高官が相次いで失脚し、指揮系統の混乱等による作戦能力の低下に関する報道が散見されている。しかし、中国内陸部に所在する軍射爆場の衛星画像を分析すると、ロケット軍が保有するミサイルの開発試験や部隊による実射訓練は継続されており、その能力を逐次強化させているようだ。
●4月に対艦ミサイル実射か
新疆ウイグル自治区若羌にある射爆場では、2019年以降、米艦艇と大きさや形状をそっくり似せた目標が確認されており、この模擬目標の数や種類を年々増加させている。当初は米空母を模した単体の目標への射撃であったものが、空母の前後に米アーレイバーク級駆逐艦と同じ形状の目標をそれぞれ設置、2025年からは空母艦載のE-2早期警戒機を模した目標も設置された。対艦ミサイルが飛行中の艦載機へ誘導されず、艦艇へ正確に照準できるかの試験と思われ、より実戦的な状況でミサイル誘導能力を検証している可能性がある。
また、2021年以降は長さ約37キロのレール上を移動する二つの艦艇目標を運用している。2023年9月22日の画像では移動目標の一つに着弾痕が確認された。航行する艦艇へ対艦ミサイルを着弾させる能力を保持していると言える。また、着弾痕のある目標は次の実射の為に修復するまでの約10か月間、破壊されたままレール上に放置されており、米国の偵察衛星がそれを確認することを前提に、米国を牽制したとも考えられる。
衛星画像を見ると、これら模擬空母打撃群・移動艦艇はいずれも年に1回程度の破損と修復が繰り返されており、実射が継続しているようだ。空母打撃群目標へは、2026年4月17日の画像で、修復された空母、駆逐艦目標が同時期に破損していることが確認され、4月に米空母打撃群への連続した対艦ミサイルの実射を行った可能性がある。また、移動目標に関しては、5月10日、21日には修復された移動目標が二つともレール上に設置されており、今年の実射準備は完了している模様だ。
●ロケット軍の能力向上
英国際戦略研究所の軍事年鑑「ミリタリーバランス2026」では、射程8000キロで極超音速滑空体を搭載する弾道ミサイルDF-27や、射程4000キロ以上と思われる地上発射型巡航ミサイルCJ-1000が本年から運用開始と判定されている。
中国は新型ミサイルの開発を継続し、射爆場での実射検証後に逐次運用開始するとともに、部隊による既配備のミサイルの実射訓練を継続し、より現実に近い環境で正確に着弾させる能力を向上させている。射爆場を見る限り、高官人事の混乱に拘わらず、ロケット軍は着実にそのミサイル能力を強化しているようだ。(了)




