日本銀行(植田和男総裁)は今月15、16の両日に開く金融政策決定会合で政策金利を引き上げる情勢だ。物価高や円安に対応するためとされるが、重大な疑義がある。利上げはエネルギー価格高騰によるインフレには無力どころか、需要を萎縮させ、国民経済にデフレ圧力を及ぼすリスクが大きい。円安に関しても、これまでの日銀利上げ効果は乏し
かったではないか。
●コストプッシュ型インフレに無力
「宴会が盛り上がる前に豪勢なメーン料理を取り下げる」というのが、日銀伝統の考え方である。需要が過熱し、インフレにならないうちに早めに金融を引き締めよ、というわけだ。しかし、コスト高による物価上昇の現局面にこれを適用するのは不可解だ。
2020年半ば以降の物価上昇トレンドは原油高騰より10カ月から1年近くの遅れで生じている。慢性デフレに対応してきた企業は人件費などを削減し、原材料価格上昇分を販売価格に転嫁しようとしない。それでも、ロシア軍のウクライナ侵攻後の原油急騰に直撃され、コスト・カットでは間に合わなくなった。
原油価格はそれでも22年後半から下がり始めたが、消費者物価の上昇基調は止まらない。仕入れ価格上昇が際限なく、じわじわと浸透してくる中で、状況をみながら、小出しで値上げに踏み切る。
物価上昇の勢いがようやく鈍化してきた矢先の今年2月末に、米国とイスラエルの対イラン攻撃が始まった。ホルムズ海峡が封鎖され、原油相場は再び高騰するようになった。米国とイランの和平合意が成っても、傷んだペルシャ湾岸産油国の石油施設の修復には時間がかかる。エネルギー価格は高止まりする情勢であり、日本の物価上昇もまた長期化しよう。
ところが、実質賃金は22年以降、前年比を下回ったままだ。脆弱な家計消費は引き続く物価高で押しつぶされかねない。
●円安阻止効果も疑問
にもかかわらず植田日銀が利上げを急ぐのは、円安阻止が念頭にあるかもしれない。だが、人工知能(AI)投資ブームに沸く米国のドル資産買いが勢いを増す中、日本の利上げで円売りを止めるのは不可能ではないか。円安から脱するためには、本国への資金還流、即ち日本企業が対米など対外投資で得た巨額の収益を日本国内向け投資に振り向ける必要がある。
そのカギは高市早苗政権による財政主導の成長投資にあるが、内需がか細くては心もとない。日銀法第4条では、金融政策に関し「政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなる」よう求めている。日銀はこのことをしっかりと踏まえるべきではないか。(了)




