6月8~9日、中国の習近平国家主席が平壌を訪問した。北朝鮮の金正恩委員長は米国から攻撃される場合に中国軍の介入を望み、習氏は台湾侵略に備えて北朝鮮軍の協力を求め、両者の思惑が一定程度一致したので訪朝が実現した。
両国の国防相が異例にも首脳会談に同席した。首脳会談に関する中国側発表に「軍隊の交流を強化する」「それぞれの安全保障を断固守る」という記述があったことに注目すべきだ。
●北朝鮮、中国海軍の基地使用容認か
習氏訪朝の背景には、金氏のトランプ米大統領に対する恐怖心があった。
情報筋によると、4月の王毅中国外相訪朝時に、北朝鮮は米国がイラン方式で金氏を攻撃するなら中国が軍事介入するよう強く求め、中国は北朝鮮に①核開発の中止②改革開放政策の採用③中国海軍による北朝鮮の日本海側の基地使用許可―を求めた。
5月の北京での米中首脳会談で、トランプ氏が北朝鮮核問題のイラン方式による解決に言及し、習氏もそれに反対しなかったという情報を北朝鮮は入手した。
ただし、本当にトランプ氏がそう発言したのかは確認できない。中国側が北朝鮮に対し、要求をのまないと米国に殺されるという脅しの手段として、そのような話を意図的にリークした可能性も排除できない。米国政治に詳しい島田洋一福井県立大学名誉教授によると、トランプ氏はもちろん、ジョン・ボルトン元大統領補佐官のような強硬派でさえ、北朝鮮核問題を軍事攻撃で解決するという案に言及したことはない。
情報筋によると、米中首脳会談でイラン方式の話が出たとの情報を入手した金委員長は、激怒するとともに強い恐怖を覚えた。そこで、トランプ氏による攻撃を避けるため、王氏が求めた3項目を受け入れることができるか検討した。金氏は中国軍が北朝鮮に入れば国内の親中派が力をつけて危険だという反対意見を退けて、中国海軍による日本海側の基地使用を原則的に受け入れ、習氏訪朝が実現したとされる。
ただし、水面下の交渉はなかなかまとまらず、5月末の訪朝予定が6月に延びた。北朝鮮は米国から攻撃された場合の中国軍の即時介入、国連の対北朝鮮制裁の緩和、北朝鮮労働者へのビザ発給、中国の銀行からの送金解禁などを求めた。中国は日本海側基地使用だけでなく、日本海での中朝軍事演習の実施、中国の台湾攻撃時に在韓米軍を動けなくするための局地戦準備を北朝鮮に求めた。これらの要求をめぐり、どこまで合意が成立したかは不明だ。
●金正恩氏に対日接近の思惑も
中朝の軍事的接近は、台湾有事を自国の有事と考える日本にとって大きな脅威だ。一方、金氏は日本を「弾よけ」として使うことも考えている。米軍が対北朝鮮「斬首」作戦を実行するとき、在日米軍基地使用が欠かせないので、日本人拉致問題を進展させて日本に接近し米軍情報を得ること、そして日本に米国の自制を求めてもらうことを狙っている。
大きく動く東アジア情勢の中で、高市早苗政権は機会を逃さず機敏に行動して全拉致被害者を取り戻してほしい。(了)




