高市早苗首相が7月にトルコで開催される北大西洋条約機構(NATO)首脳会議への出席を見送ることになった。理由は「会期末の国会日程を優先するため」だという。昨年の石破茂前首相に続き、またしても日本の首相は内政の都合を理由に安全保障を議論する外交舞台を欠席する。国際社会における日本の存在感を自ら貶めるこの愚行をいつまで続けるつもりか。
●日英で7倍の格差という異常事態
日本の首相がどれほど異常な環境に置かれているかは、同じ議院内閣制を採用する英国と比較すれば一目瞭然だ。自民党の大野敬太郎衆院議員の調査(2015年データ)によれば、年間の首相の議会出席時間は日本369時間32分、英国49時間45分と約7倍もの差がある。
英首相の議会(下院)出席は通常週1回に限られる。法案の採決や、国家の重大事態に関する演説(声明)などで他の日に出席することはあるが、それ以外は担当閣僚らが引き受けるため、英首相は議会に過度に縛られることなく、トップ外交や危機管理対応に集中できる。
対する日本の首相は国会審議で時に1日8時間もひたすら席に座らされ続ける。これはまさに、昭和から平成、令和へと元号が変わっても、一向に変わらない「ガラパゴス的な因習」である。
野党にとって首相の国会出席は、政権を攻撃し、メディアに露出する絶好のパフォーマンスの場だ。そのため、出席義務の緩和には猛反対する。与党もまた、国会運営を円滑に進めるため、安易に野党の首相出席要求をのんできた。しかも、事務方が答えれば済むレベルの質問まで首相に集中し、議論の質は著しく低下している。
英国の「首相質疑」(プライム・ミニスターズ・クエスチョンズ=PMQs)をモデルに導入されたはずの「党首討論」は、今や完全に形骸化し、忘れた頃に開かれる形ばかりの儀式に成り下がった。これでは国益を守るための議論ではなく、単なる「時間の浪費」である。
●「正しい時間の使い方」へ意識改革を
今こそ、メリハリのある国会改革を断行すべきだ。大野氏が提案するように、政策の方向性や政治判断は首相が答え、行政執行や専門的な実務内容は担当大臣や副大臣が答弁するという「答弁の明確な切り分け」を早急に進めるべきだろう。
そして何よりも必要なのは、与野党の意識改革だ。首相を国会に縛り付けておくことよりも、国際会議で日本のリーダーシップを示し、官邸で国家の重要案件の指揮を執ることの方が、一国の指導者として「正しい時間の使い方」であるという共通認識を持たねばならない。
世界が激変するなか、日本が「内弁慶のガラパゴス政治」に埋没している余裕はない。不毛な国会引き止め工作を即刻やめ、首相を世界の舞台へと解き放つべきだろう。(了)




