公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

田村秀男

【第1385回】現下の円安は成長投資の好機である

田村秀男 / 2026.07.06 (月)


国基研企画委員・産経新聞特別記者 田村秀男

 

 現下の円安は強い日本経済再構築の追い風と見るべきだ。円売りを仕掛ける強欲な為替投機筋の思惑に動じる必要はない。

 ●国力を増す戦略17分野
 円安は日本での生産を有利にし、産業界の海外投資志向の転換を促す。高市早苗政権は戦略17分野を挙げ、官民一体となった投資と取り組んでいる。17分野は人工知能(AI)、先端半導体、データセンター、量子コンピューティング、高速通信網、防衛装備、航空宇宙設備、造船、永久磁石などだ。いずれも国内で投資、生産・供給しないことには、国力の増進に寄与できないし、衰退を招きかねない。しかも、中国からの執拗な威圧行為、安値攻勢にさらされている。
 高市政権は米国に対し3年間で5500億ドル(約88兆円)もの対米投資を約束しているが、国内投資と組み合わせることにより、AIなど米国が圧倒的優位にある技術を取り込んで相乗効果を生み出し、中国の脅威をはね返すべきだ。

 ●半導体王国再興も可能
 円相場がいかに日本産業の命運を左右してきたかは、かつて世界を席巻した日本の半導体産業や造船が円高とともに没落していったことを思い浮かべればよい。1985年9月のプラザ合意後の円高の急速な進行の中、自動車など主力産業分野は海外生産によって競争力を維持してきたが、国内生産が主体となる造船は対応出来なくなった。
 半導体メモリは度重なる超円高の波を受けて、韓国、台湾との競争で圧倒的な不利な状況に追い込まれた。半導体は巨大な国内設備投資と研究開発投資を先行させる必要がある。いったん世界市場シェアを激減させてしまうと投資が止まり、挽回が困難になる。半導体メモリで生き残ったのは旧東芝メモリのキオクシアだけだが、東芝時代に発明、商業化した独自の技術によって円高の嵐を耐え抜いた。
 先端半導体国内生産では台湾の受託製造専門大手のTSMC、米マイクロン社と米IBMの設計に基づくラピダス社に巨額の政府資金補助が行われているが、円安による競争条件好転を生かせば、半導体王国再興の道が見えてくる。
 
 ●機動的財政出動の条件整う
 高市政権の投資戦略を財政面で支えるのは「責任ある積極財政」路線である。高市政権が6月末にまとめた「経済財政運営と改革の方針」(骨太の方針)原案では、政策支出を税収の範囲内にとどめる基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)黒字化目標を事実上撤廃した。税収は増え続け、成長投資のカギとなる機動的財政出動の条件は整った。政府支出に沿った産業界の国内投資回帰が急がれる。(了)