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今週の直言

櫻井よしこ

【第97回】玄海原発問題で見える政権延命の下心

櫻井よしこ / 2011.07.11 (月)


国基研理事長 櫻井よしこ

いま、国家の基本的政策に心を砕いているのは誰か。本来、その責務を担うべき菅直人首相ではなく、地方自治体の首長らではないか。玄海原子力発電所の再稼働問題から菅首相の国益なき私益追求の姿が見えてくる。

町長が再稼働の決断
佐賀県玄海町の岸本英雄町長は7月4日、九州電力に定期検査で停止中の原発2号機と3号機の再稼働に同意する旨を伝えた。町長は再稼働決定前に、議会と共に玄海原発の安全性について調べた。

過去2000年、大地震や津波が発生した痕跡はなく、自然条件から考えて、この地域を原発立地に安心できると結論づけた。東日本大震災で生じた 電力供給不安についても考えた。「いま、西日本の原発までしぼませるのは、日本全体にとって逆に不安です。電力供給で日本経済を支えることが大事だと考えました」と岸本町長は私に語った。

古川康佐賀県知事にも取材した。知事は玄海町の意向を踏まえる一方で、原発問題は国家のエネルギー政策の柱の一つであり、本来、国家が定めるものだとの見地から、玄海原発再稼働について、政府の姿勢を問うてきた。原発政策はまさに国の指導下にあるのであり、安全性や運転再開か否かを一企業もしくは一地方自治体の責任に帰するのはおかしい。

浜岡原発を政治判断で止めさせた首相が、玄海原発の再稼働についても政治判断を示す責任があるのは当然である。 但し、政府決定には相応の合理性と長期見通しがなければならない。この点について6月29日、海江田万里経済産業相が説明し、佐賀県は納得した。 残る県の条件は首相自身の考えを確認することだった。

思いつきの首相指示で混乱
玄海原発の展開は日本の未来展望に大きな影響を及ぼす。自然エネルギーの比重を増やすにしても、尚、1~2世代の間、日本は一定程度の原発を必要とする。すでに電力不足への懸念から、日本の産業基盤は損なわれ始めている。また猛暑の季節を迎え、さらなる電力不足は、高齢者や病人、子供など、犠牲者を出すことにつながる。

速やかに佐賀県の了承を得るべく努力し、玄海原発再稼働に道を開き、その他の定期点検済み原発の再稼働につなげるのが政府の責任だ。

海江田氏はその努力をし、佐賀県に玄海原発の安全を保証し、再稼働を要請した。ところが首相は7月6日、突然新たな安全性検査が必要だと言い始めた。完全な閣内不一致である。

地方自治体が日本全体の電力需給を考え、決断を下したのとは対照的に、首相はエネルギー政策の全体像、工業の衰退と国民生活の展望などについての説明もなく、突然の新しい指示で脱原発政策をとるのである。思いつきの指示から透視されるのは、首相自身の政権延命の下心でしかない。(了)

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第97回:玄海原発問題で見える政権延命の下心(櫻井よしこ)

 

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