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髙池勝彦

【第96回】中国新幹線の特許出願に国を挙げて対抗せよ

髙池勝彦 / 2011.07.04 (月)


国基研理事・弁護士 髙池勝彦

6月30日、中国の北京と上海を結ぶ全長1318キロの新幹線が開業した。予定より1年早い開業とのことだ。これは翌日の中国共産党創立90周年記念日に合はせたものである。

東北新幹線「はやて」の盗用
新幹線は我が国が独自に開発し発展させてきたものであり、そのことは世界的に周知の事実である。我が国に刺激されて、フランスやドイツも別の技術を開発してきた。

中国は、川崎重工から我が国の新幹線の車両を輸入してゐる。シーメンスからドイツの車両も輸入してゐる。今回の北京―上海の新幹線は、東北新幹線の「はやて」の技術を使つて製造されたといはれてゐる。当初から、中国に新幹線車両を輸出すれば技術が盗まれてしまふとの批判があり、JR東海などはそのため輸出しなかつたと伝へられてゐる。

中国は、我が国の新幹線技術を使つて製造した車両を、アメリカをはじめ世界各国に輸出しようとしてゐることも知られてゐる。我が国もこれらの国に新幹線を輸出しようとしてゐるので、我が国は、中国へ新幹線を輸出したことによつて、中国に我が国の市場を奪はれる可能性が高くなつてきてゐるのである。

「国産技術」主張する厚顔さ
中国の行為はそれにとどまらない。開業に伴つて、我が国の新幹線より高速であるからこれは中国の技術であるとして、欧米やロシアで特許申請の手続きを進めてゐるとのことである。

その厚顔さにはあきれるが、領土問題や、軍事問題に限らず、国を挙げてなりふり構はず国威の発揚や利益追求を図るのが中国のやり方であることにあらためて注意しなければならない。そもそも川崎重工などが今まで特許を申請してこなかつたことにも疑問がある。

発明について要件が満たされれば特許が認められる。特許の要件のうち、「新規性」と「進歩性」の要件が重要である。我が国の新幹線の技術の基本的なものは既に数十年を経過してゐるので新規性がないから特許は認められない。

また、新規性のある発明であつても、その分野の通常の知識を有する者が容易に発明できるものには、「進歩性」がないといふことで特許が認められない。つまり独自性がなければならない。

特許は申請してから認められるまでに2~3年かかる。認められれば特許権が付与され、抵触する製品は販売を禁止され、損害賠償を請求されることになる。

中国が特許申請した技術が、新幹線の基本的技術に加へてどれだけこの要件を満たしたものであるかが問題であるが、政治的圧力を含めあらゆる手段を使つてごり押しを する中国に、我が国も総力を挙げて対処する必要がある。(了)

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第96回:中国新幹線の特許出願に国を挙げて対抗せよ(髙池勝彦)