国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力
野田政権が竹島問題を国際司法裁判所に単独提訴する方針を事実上撤回した。提訴準備はほぼ終わっているにもかかわらず、当面は韓国の今後の出方を見極め、すぐに提訴しないという。大きな間違いであり、韓国と国際社会にわが国の主張が誤解されかねない。李明博大統領が日韓友好精神を踏みにじって竹島上陸を強行したことに対して、野田政権は抗議したのではないか。これでは、わが国は竹島の韓国による不法占拠を認めていないという、国家として当然の主張が伝わらない。
政府関係者は、韓国大統領の竹島再上陸があれば単独提訴に踏み切るなどとして、韓国の行動を抑制する外交カードとして提訴を使うと話しているが、これも大きな誤りだ。大統領の再上陸をやめさせるためには、日本政府が取る行動により韓国側に上陸は失敗だったと思わせることが絶対に必要だ。すなわち、竹島問題が厳然たる領土紛争として存在することを内外に強くアピールする機会として活用することだ。そのためには国際司法裁判所への単独提訴を即時に実行すべきなのだ。
過剰な対韓配慮外交
8月21日、政府は韓国に対して国際司法裁判所に共同提訴することを求める口上書を伝達したが、韓国はこれを拒否した。日本が共同提訴を求めたのは、日韓国交回復以前の1954年と1962年の2回だけで、その時も単独提訴は行われなかった。
1965年の日韓国交正常化の際、竹島問題は最後まで懸案として残った。最後に、「両国間の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとし、これにより解決できなかった場合には、両国政府が合意する手続きに従い、調停によって解決を図るものとする」という内容の外相同士の「紛争解決に関する交換公文」を確認した。
しかし、韓国は1990年代以降、竹島に不法建造物を次々に造り、周囲で軍事演習を行い、最近では国会議員の定期的上陸や数十万人の観光客上陸などを繰り返している。それに対して日本は相手に配慮する事なかれ外交で、交換公文に基づく第三者による調停を求めることさえしないできた。
2月以前の行動が必要
李明博大統領が竹島上陸という暴挙を強行した以上、日本は竹島問題での対韓配慮外交を転換し、機会あるごとに韓国の不法占拠を問題にする国際広報に全力で取り組むべきだ。その意味から国際司法裁判所への単独提訴は先送りすることなく即時実行しなければならない。特に、李明博政権の任期が来年2月までであることを踏まえ、李明博大統領の暴挙に抗議する意味を込めて任期中に必ず提訴すべきだ。(了)
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第165回:竹島問題を即時に国際司法裁へ提訴せよ(西岡力)