北朝鮮が2月12日に3度目の核実験を強行したことに対し、オバマ米大統領の演説や発言からは、北朝鮮の核武装を何としても阻止するという強い意志が伝わってこない。北朝鮮に核兵器を放棄させることを既にあきらめ、「核武装した北朝鮮」にどう対処するかに早くも関心が移ったのではないかと思えるほどだ。
●米は北の核武装阻止を断念?
ホワイトハウスは13日(日本時間14日)に行われた安倍晋三首相とオバマ大統領の電話会談の概要を発表したが、オバマ大統領の発言として紹介されたのは、安倍首相が訪米して22日に行われる日米首脳会談でこの問題について掘り下げた議論をしたいとの希望表明を除くと、「核の傘」の提供を含む日本への防衛約束の再確認だけだった。「核の傘」は米国が日本の核武装を心配する時によく言及するもので、オバマ大統領は北朝鮮より日本の核武装を心配しているのかと、突っ込みを入れたくなる。
オバマ大統領の12日の一般教書演説にも首をかしげた。イランに対しては「核兵器の取得を阻むために必要な措置を講じる」と核武装阻止を明言しているのに、北朝鮮に関しては「ミサイル防衛を強化する」と、北朝鮮の核ミサイル保有を前提にしているかのような言い方になっていた。
イランと北朝鮮に対する米国の対応の違いは、イランの核開発に対しては米国の同盟国イスラエルが独自の軍事行動も辞さないほど強い反対姿勢を打ち出しているのに対し、同じ同盟国である日本や韓国は北朝鮮の核問題への取り組みが手ぬるいことが影響しているとの見方もある。
その韓国では、北朝鮮の今回の核実験を受けて、与党の有力者や政府系シンクタンクの研究者から、韓国も核兵器を持つべきだとの声が上がっていると報じられた。だが、日本では今、そうした核武装論がなぜかほとんど聞こえない。
●大叔父に倣え
1964年10月、中国が初の核実験を実施した。その3カ月後の1965年1月に当時の佐藤栄作首相はワシントンを訪問し、ジョンソン大統領との日米首脳会談で、個人的意見と断りながらも、「中共が核兵器を持つなら日本も持つべきだ」と発言したという公式記録が米側に残っている。
佐藤氏は安倍首相の尊敬する祖父岸信介元首相の実弟で、安倍首相の大叔父に当たる。安倍首相は小泉純一郎政権の官房副長官時代に、戦術核の使用は違憲でないと発言したことがある。ワシントンを今週訪れる安倍首相は、オバマ大統領との首脳会談で、大叔父に倣って、「北朝鮮が核兵器を持つなら日本も持つべきだ」と言ってみたらどうか。オバマ大統領は驚き、北朝鮮の核武装を断固阻止する気になるかもしれぬ。(了)