2月12日、北朝鮮が核実験を強行した。国連安保理決議に対する明白な違反であり、国際社会への許し難い挑発行為と言える。
北朝鮮はかつて核拡散防止条約(NPT)に加入し、核保有国から核技術の支援を受けた。その後、一方的にNPT脱退を宣言して核武装を進めた。NPTに最初から入っていないインドやパキスタンと異なる。北朝鮮のようにNPTを通じて核技術を手に入れ、核武装した国は他にない。これが許されれば、NPT体制は根底から崩れる。
また、1994年から2002年まで北朝鮮は核開発凍結の見返りとして米国から毎年50万トンの重油を無償で提供され、同じ時期、核武装に使われにくい軽水炉の建設工事が日韓などの出資で進んだ。日米韓をだまして秘密裏に核開発を続けていたという点でも許し難い。
●ウラン爆弾ならより深刻
北朝鮮はこの日の核実験について、「以前とは違って爆発力が大きいながらも小型化、軽量化した原子爆弾を使って高い水準で安全かつ完璧に行われた」(朝鮮中央通信)と発表した。韓国国防省はTNT火薬換算6〜7キロトンの威力だと見ている。同省は2006年の1回目の核実験を1キロトン、2009年の2回目を2~6キロトンと見ているので、過去より威力が大きくなっている。
過去2回はプルトニウム爆弾の実験だったが、今回は濃縮ウラン爆弾だった可能性もある。数日後には、空気中に拡散した物質の分析などから実験の内容が明らかになるだろう。
プルトニウムは原子炉で使用した核燃料を再処理して作られる。北朝鮮が持つプルトニウムの総量は100キロ未満と見られており、同国のプルトニウム生産は2008年以降止まっているので、実験によって保有量が減るのは事実だ。
より重大な脅威は、今回の実験が濃縮ウラン爆弾だった場合だ。北朝鮮は1990年代初め、パキスタンと秘密協定を結び、濃縮ウランを生産する技術を導入した。濃縮ウランは原子炉を必要とせず、電気さえあれば地下施設で量産が可能だ。筆者が北朝鮮内部から最近入手した情報によると、北朝鮮の濃縮ウラン生産は2006年から本格化したという。濃縮ウラン爆弾が完成すれば、イラン、シリアなどテロ国家やアルカイダなどのテロリストに販売される危険も出てくる。
●ドルと石油の流入を止めよ
北朝鮮は最貧国であり、外部から外貨や石油などが提供されなければ核ミサイル開発も独裁体制維持もままならない。拉致問題の解決についても同じことが言えるが、彼らがこのままでは独裁体制を維持できないと恐れるところまでいかなければ、実質的交渉は成立しない。
ブッシュ政権が行った金融制裁が効果を上げたのはそのためである。中国が年間50万トンも提供している原油、韓国が開城工業団地を通じて送っているドルを止めることが緊要だ。日米韓3国が北朝鮮の核武装を絶対許さないという腹を固め、中国に圧力をかける枠組みの構築が求められる。(了)