国基研客員研究員・統一日報論説委員 洪熒
韓半島(朝鮮半島)西部の海上休戦ラインである北方限界線(NLL)を哨戒中だった韓国海軍の天安号が3月26日にNLL南側の白翎島付近で撃沈されてから1カ月が過ぎた。この事件で韓国軍の47人が死亡または行方不明となり、捜索作業に参加した民間人からも9人の犠牲者が出た。軍艦が武力攻撃を受けるのは宣戦布告の事由に当たる。北側の攻撃なら停戦協定の破棄を意味する。北側はNLLの無効化を狙い30年以上挑発してきた。今回も金正日政権の仕業であることは明確だ。今は李明博韓国大統領がこの事態にどう対処するのかが専ら関心事である。
理不尽な李大統領の対応
李大統領は事件直後から理不尽な態度を取った。常識的な韓国人なら北側の仕業と直感できたのに、大統領と彼の安全保障スタッフは、北側の攻撃だと報告した軍を「予断するな」と叱責し、「北側介入の証拠はない」と発表した。青瓦台(韓国大統領府)はさらに「軍が言うことを信じるな(報道するな)」とメディアに圧力をかけた。これで韓国の「親北左派」は一斉に北側介入の可能性を否定し、逆に国軍を非難する異常事態になった。外部からの攻撃であることが判明した今も、大統領は加害者への報復は言わず、被害者の国軍ばかりを咎めている。
李大統領はなぜこういう不思議で怪しからん態度を取っているのか。理由は非常に単純だった。実は、青瓦台はひそかに南北首脳会談を画策していた。それで、まさか北側がやったはずがない、何とか首脳会談を実現させたい、という念願が、判断力と対応を狂わせたのだ。
左翼政権の親北政策を継承
青瓦台は今年に入って南北首脳会談の根回し工作を活発化してきた。大統領の側近を自任する人々は、あらゆる機会をとらえて、今年中の第3回南北首脳会談開催を既定事実にしようとしてきた。青瓦台を牛耳るのは、金星煥安保首席秘書官、鄭文憲統一秘書官、金徳龍国民統合特別補佐官など、金正日政権との共存を主張してきた面々だ。
そもそも、李大統領が標榜する「中道実用路線」は、安保に適用できない幻想だ。敵と戦わないのは共存を意味するが、共存の条件は、こちらが相手を抑えるか、相手の要求をのむかである。経緯は不明だが、李大統領は南北関係において金大中元大統領と盧武鉉前大統領の路線を継承した。それは中道実用主義価値観の必然的帰結だ。盧武鉉氏の「国民葬」と金大中氏の「国葬」こそ、その証拠だった。天安号事件は李大統領の本質を露呈した。李大統領は金大中氏と盧武鉉氏の対北路線を継承し、実行だけが遅れている点で第3次左翼政権と言えるだろう。(了)
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第35回:韓国哨戒艦撃沈で分かった李政権の本質(洪熒)