国基研理事・拓殖大学教授 遠藤浩一
平沼赳夫氏が与謝野馨氏らと組んで設立した新党「たちあがれ日本」に対する冷笑的なコメントや腰の退けた対応が目につく。自分も疾うに70歳を超えた人が「立ち上がるにはギプスと杖が2、3本いるのとちやいますか」(谷川秀善自民党参議院幹事長)などと嘲るのは見苦しい。
無視できない2割の評価
読売新聞の世論調査によると、新党に対して「期待する」との回答は18%、「期待しない」は76%だつた。「期待せず」が多いのは驚くに値しない。むしろ、年老いた政治家がたつた 5人(全国会議員の0.7%弱)集まつただけの政党に、2割近くもの期待が集まつてゐることを過小評価してはいけない。わが国の有権者は1億400万人だから、2000万近くが新党に票を投じる可能性があるわけである。
もちろん現在の期待感は漠然としたものだし、そこには濃淡もある。2000万規模の票が塊となつて移動するわけではない。が、自民党に失望し、民主党に唖然とする有権者が日に日に増大してゐることの、これは端的な表れなのである。
平沼氏は設立会見で「政治生命のすべてを懸けて、ほかのことは考へずに、尊い日本のために汗をかいていかなければならないといふ思ひで立ち上がつた」と述べた。民主党政権打倒以外のことは考へない、といふところがミソである。
平沼氏と与謝野氏の理念・政策的な差異をことさら強調する向きもあるが、それを乗り越えて民主党の暴走を食ひ止めなければならぬと、彼らは立ち上がり、そこに「18%の期待」が集まつてゐるのである。かうしたやむにやまれぬ危機感を、自民党や他の「反民主」諸政党も共有すべきであらう。与謝野氏が自民党離党の際、谷垣禎一総裁に対して述べた「自民党分裂とは取らないでください」といふ一言には、その含みがある。
選挙協力が課題に
鳩山政権に対する支持率は3割を切つた。しかし自民党への支持が回復する兆しは見えない。昨年の総選挙(比例選挙)で民主党は900万票近く得票を増加させたが、その大半は自民党支持層及び無党派層であつた。半年経つて果たして彼らは民主党を見限りつつあるが、さりとて谷垣自民党はその受け皿たり得てゐない。
「民主党の暴走を食ひ止める」ための当面の課題は、第一に、新党は候補者の層をなるべく厚くすること、第二に、自民党は誰の目にも分かるやうな党再生措置を講ずること、その上で第三に、諸新党と自民党は連携し、民主党から逃げ出した票を吸収し、かつそれを確実に議席に結びつける努力をすること、である。選挙協力が最重要課題として浮上するだらう。仲間内の嘲笑や罵倒は、何も生まない。(了)
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第34回:「新党」への国民の期待とその課題(遠藤浩一)