公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

西修

【第36回】いまこそ憲法論議の深化を

西修 / 2010.04.30 (金)


国基研理事・駒澤大学教授 西 修

まもなく日本国憲法が施行されてから63年目の5月3日を迎える。5月18日には、憲法改正国民投票法が施行される。この日は、国会による憲法改正の発議が解禁される日でもある。しかしながら、憲法改正原案を審査すべき憲法審査会がいまだに衆参両院に設置されていない。参議院民主党は、4月27日の常任役員会で憲法審査会規程の制定を今夏の参議院選挙後に先延ばしすることを決定した。憲法審査会の設置は、国民投票法および国会法で義務づけられているのである。まさに国会自身による法律無視がまかり通っている。

民主党のマニフェスト違反
民主党のマニフェストには「今後も国民の皆さんと自由闊達な論議を各地で行ない」との一節がある。マニフェストが発表されてから9か月余、同党が「自由闊達な憲法論議を各地で行なった」という情報を耳にしたことがない。それどころか、マニフェストには明記されていない在日外国人への地方参政権付与など、憲法違反の法案を提出しようという構えさえ見せている。

最大野党の自民党は、憲法改正推進本部で作業しているものの、その成果が目に見える形で外部に発表されていない。幾つもの新党が結成されたが、自主憲法を柱の一つに掲げているのは、平沼赳夫氏の「たちあがれ日本」くらいである。

憲法審査会設置を早急に
いま各党に早急に求められるのは、国会が自ら定めた法律に従って憲法審査会を始動させることである。それと同時に、国益上、最も重要な集団的自衛権に対する態度を明確に示すことである。「憲法上、保有はできるが、行使できない」という内閣法制局の解釈を墨守していては、日本国が立ち行かなくなることは明瞭である。中国海軍ヘリコプーターによる海上自衛隊護衛艦への2度にわたる異常接近、韓国軍艦爆発事件での北朝鮮からの攻撃の可能性など、わが国周辺は予断を許さない状況になっている。憲法にかかわる諸問題を放置しているわけにはいかない。

民間憲法臨調(代表世話人、三浦朱門・元文化庁長官)では、5月3日午後1時半より砂防会館別館1Fホールにて、本研究所理事長の櫻井よしこ氏、副理事長の田久保忠衛氏らを迎えて、「いま、改めて国家を考える」をメーンテーマに、国益とは何かという視点から憲法問題を真摯に考えることを企図している次第である。(問い合わせ先は民間憲法臨調Tel 03-5157-5537)(了)

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第36回:いまこそ憲法論議の深化を(西 修)