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【第61回】露大統領訪問なら毅然とした対応を―北方領土問題

h0330 / 2010.10.25 (月)


安全保障問題研究会会長 袴田茂樹

尖閣沖での海上保安庁巡視船と中国漁船の衝突事件で、中国は経済的手段も動員して日本に圧力をかけ、日本政府はあっけなく屈服した。尖閣を中国領と言うのは歴史の捏造だが、日本も「国内法に従って粛々と対応する」と声明した以上、強烈な「チキンレース」が始まったことを自覚すべきだった。しかし、主権とか国家に関するまともな認識が欠如している日本政府は、そのことさえ認識していなかった。したがって、わが国は中国の強硬姿勢を過剰とか異常な反応と見た。

しかし、政治と戦争が究極において同じ次元の問題とすれば、中国の強硬姿勢は傲慢ではあっても異常ではない。主権問題とは、それだけ真剣かつ重大な問題なのだ。領土問題には、それだけの覚悟をもって臨む必要がある。そのことをしっかり認識した上で、メドベージェフ・ロシア大統領の北方領土への訪問声明が意味することを考えたい。

まかり通る歴史捏造
メドベージェフ大統領は、9月2日を戦勝記念日と制定した。もちろん、対日戦勝記念日だ。その後、9月26日から28日まで中国を訪問して、北京で「第2次世界大戦終結に関する共同宣言」を発表した。

この共同声明は、「軍国主義者を英雄化し解放者を中傷する試みを強く非難」するとともに「大戦の結果の修正は許さない」という内容である。つまり、歴史や領土問題でも中露は歩調を合わすと宣言したに等しい。この状況で、大統領の北方領土訪問の声明がなされた。

これは極めて由々しい事態である。というのは、ロシアも中国も日本に関わる歴史を捏造して、両国は歴史認識と領土問題で共同歩調をとると声明しているからだ。ソ連軍の対日参戦は日ソ中立条約を破っただけでなく、1945年9月2日のスターリン演説が示すように、「歴史の汚点をそそぐ」という報復主義的なものだった。

にもかかわらず、ロシアでは、対日参戦を「日本の軍国主義からの解放」の戦争と位置づけている。サハリンも北方領土も、ソ連軍が日本の軍国主義者の侵略から解放したという歴史の捏造がまかり通っているのだ。大統領の北方領土訪問は、その捏造した歴史観の下に、北方領土をロシア領として正当化する行為となる。

日本は経済的犠牲も覚悟せよ
したがって、日本がこれを断固として批判するのは当然だ。ロシア側は、日本のホンネは経済交流で、北方領土問題は国内向けのタテマエと見ている。もし大統領が訪問したら、日本は経済的な犠牲を覚悟しても、毅然とした対応をすべきだ。それができなければ、主権国家として取り返しのつかない失態となる。(了)

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第61回:露大統領訪問なら毅然とした対応を―北方領土問題 (袴田茂樹)