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【第72回】無意味な内閣改造――消費税を玩具にするな

遠藤浩一 / 2011.01.17 (月)


国基研理事・拓殖大学大学院教授 遠藤浩一

今回の内閣改造及び党役員人事の中身は、①仙谷由人、馬淵澄夫の両〝問責大臣〟及び反日デモ参加を反省しない岡崎トミ子国家公安委員長の更迭、②しばらく前まで「民主党が日本経済を破壊する 」と広言してゐた与謝野馨氏の閣内取り込み、の二つである。あとはそれに付随する〝玉突き人事〟でしかない。さうさう、〝玉突き〟の余波で、参院議長を務めた江田五月氏が法相に就任するといふ珍事もあつた。国会議長も軽くなつたものである。

野党挑発は百害あって一利なし
世間では「消費税増税シフト」などと騒いでゐるが、冗談ではない、変節をものともしない功利主義者を一人閣内に取り込んだくらゐでカタがつくほど、この問題は容易ではない。消費税増税はもはや、いかに実現するかといふ政治課題になつてゐる。増税論者が閣内で好き勝手なことを言つてもあまり意味はない。

肝腎なのは、国会での合意形成である。野党も巻き込んで成立させなければならないのだが、ここで菅直人首相は、二つのアピールをしてみせた。一つは与謝野氏の登用である。ところがこれで与党内に軋轢あつれきが生じ、野党も与謝野大臣への問責をちらつかせるなど態度を硬化させてゐる。

もう一つは、「野党は拒否権を持つてゐるが、(与党同様)国民に責任を負はなければならない立場にある」との牽制である。財政再建は国家的課題だから野党だつていい加減な対応ではすまされないといふのはその通りだが、かうした発言はわれわれ評論家に任せておけばよろしい。

総理の仕事は責任をもつて政策を遂行することである。野党時代のやうな(場当たり的な)挑発は百害あつて一利無しといふことが、まだ分かつてゐないらしい。

党内抗争にのめり込む菅氏
人事においても言動においても、菅氏は裏目に出るやうなことばかりしてゐる。政治センスが決定的に欠如してゐるか、狙いは別の所にあるかのいづれかだらう。

いや、両方なのかもしれない。菅氏が野党の政審会長クラスならともかく、宰相の器でないことは、この半年余でほぼ証明されたといつていい。おそらく自分でも薄々自覚してゐるのではないか。が、まだ辞めたくはない。適格性はないけれどもその地位にしがみつきたいときにどうするか。元日に公邸で開いた新年会で「権力を掌握する」と発言してゐるが、党内権力抗争にのめり込むしか、すべきことが見当たらないのである。左翼に典型的なパターンである。

かつて「政党は道具である」と言ひ放つた菅氏。消費税も人事も、彼の〝政治ごつこ〟の玩具にすぎないのだらう。国民はたまつたものではない。(了)

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第72回:無意味な内閣改造――消費税を玩具にするな(遠藤浩一)