公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

織田邦男

【第1098回】旧装備廃棄は戦力強化にならない

織田邦男 / 2023.12.11 (月)


国基研企画委員・麗澤大学特別教授・元空将 織田邦男

 

 「戦争の帰趨は後方(ロジスティックス)で決まる」という。また「制空権なき勝利はあり得ない」ともいわれる。今年6月からのウクライナ軍による反転攻勢は思ったほどの成果を出せず、ウクライナの戦線は膠着気味である。ウクライナ軍の苦戦は、ロシアが制空権を握る戦況に加え、兵器不足、弾薬不足という「後方」に起因する面が大きい。
 後方の問題については、程度の差こそあれロシア軍も同じ悩みを抱える。国内では武器弾薬の戦時増産体制に移行したようだが、北朝鮮からも弾薬調達を実施しているように、苦境は明らかだ。
 戦車などの重装備はそう簡単に増産するわけにいかない。ロシアは従来、旧式装備に防錆措置を施して保管しており、逐次、これを整備して現役に復帰させている。
 旧式装備を保管しておくことは、無駄なようにも思えるが、消耗戦が長期化した場合、継戦能力向上に役立つ。ソ連時代から戦争慣れしたロシア軍の知恵である。

 ●ウクライナが欲しがる自衛隊の旧式兵器
 自衛隊の場合、新装備が入れば、旧装備は自動的に廃棄処分となる。装備定数が決められており、それを超えることは許されない。一例を挙げると、PAC3という最新の地対空誘導弾が導入されれば、それまでのPAC2地対空誘導弾は廃棄処分になる。また20ミリ対空機関砲は、防空兵器としては旧式化しており、効率化という名の下に廃棄される。
 だが、PAC2は弾道ミサイル対応能力こそないが、戦闘機への対応能力は有効である。20ミリ対空機関砲は、戦闘機への対応能力はないかもしれないが、ドローンなどへの対応は可能だ。むしろ安価なドローンに対しては費用対効果の上で優れている。これらを廃棄せずに保管しておけば、将来、「救世主」になる可能性もある。
 他方、これらは、ウクライナ軍が喉から手が出るほど欲しがっている兵器である。欧米諸国がウクライナに軍事支援をする中で、日本は政策上できないといってウクライナの欲しがる兵器を廃棄するのは許されるものだろうか。

 ●防衛力整備にマイナスの定数管理
 岸田文雄政権は、昨年策定された防衛関連3文書に基づき、防衛力の抜本的強化を図っている。現行の厳格な「定数管理」は効率的にも見えるが、持久戦に耐えうる強靭な防衛力を整えるには明らかにマイナスである。
 財務省の諮問機関、財政制度等審議会の11月20日の会合に「令和6年度予算の編成等に関する建議」が出され、防衛に関し「合理化・効率化を徹底」することが求められた。だが、「スクラップ・アンド・ビルド」という美名の下での「合理化、効率化」が、必ずしも戦力の抜本的強化にはつながらないことを知るべきだろう。(了)
 
 

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ウクライナ戦争の教訓の一つは弾薬などのロジスティックスの確保です。そのためロシアは朝鮮戦争時の兵器まで使用しています。しかし自衛隊は定数管理で新品に替わり古くなった兵器は破棄します。しかし古くなった20ミリ機関砲はドローン対策に有効でウクライナ支援に使えます。保管しない今の制度でいいのでしょうか。