公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

岩田清文

【第1118回】公明党は連立与党たる責任を果たせ

岩田清文 / 2024.02.19 (月)


国基研企画委員・元陸上幕僚長 岩田清文

 

 日英伊3か国共同による次期戦闘機の開発をめぐり、公明党首脳部が慎重姿勢を崩さず、連立与党の足並みを乱している。

 ●盟友を増やす戦闘機第三国移転
 高度な技術と先進的な運用ノウハウが要求される次世代戦闘機の開発は、もはや一国のみでは開発できず、それぞれの国の最先端技術と知見を統合することが主流となっている。この共同開発により、日本の航空優勢獲得能力が世界トップレベルに向上するとともに、同盟関係にも匹敵する日英伊の連帯関係が生まれることになる。戦闘機は約40年使用し続けることになるが、その間、機体の維持・整備、部品製造や、能力向上などを通じて、三か国は長い付き合いとなる。真の信頼関係なくして共同開発はあり得ない。
 その信頼構築のスタートラインにおいて、共同開発された戦闘機の完成品を日本が第三国に移転することに対し、公明党が難色を示したまま時計が止まっている。戦闘機を日英伊各国が使用することは当然であるが、3か国の了解の下、価値観を共有する同志国などに移転することは、装備品という絆を介した同盟的な仲間を増やすこととなり、我が国の安全保障力を強めることにも繋がる。
 しかし、完成した戦闘機の第三国への移転に公明党は抵抗している。山口那津男代表は昨年11月29日の会見で、「国民の理解が得られるように慌てないで議論していくことが重要だ」と慎重姿勢を示した。昨年4月から積み重ねてきた自公両党実務者協議の成果の「ちゃぶ台返し」とも言えるこの発言に対し、自民党国防部会・安全保障調査会合同会議の場では、「連立を解消してでも進めるべきだ」との声も上がっていた。
 さらに今月5日の衆院予算委員会において、岸田文雄首相が「完成品の第三国移転を含め、国際共同開発生産に幅広く、円滑に取り組むことが国益にかなう」と明言したのに対し、山口代表は翌日の会見で、「重要な政策変更だ。なぜ変更する必要があるのか十分に議論が尽くされていない」と反発した。

 ●党益より国益を考えよ
 このような中、13日、やっと岸田首相が重い腰を上げ、山口代表と直接会談した。その結果、実務者協議の枠組みを政務調査会長レベルに格上げして、検討を進めることになった。
 3月からは、共同開発に関する日英伊の役割分担の具体化調整が始まる。その段階においてもなお、日本政府・与党内で意見がまとまらないようでは、日本の信頼にも関わる。速やかに政調会長同士の協議を終え、第三国移転に道を開くべきだ。公明党は、連立与党たる責任を自覚し、党益ではなく国益を念頭に判断をすべき時だ。(了)