中国共産党が腐敗問題で揺れている。今年11月には第3回中央委総会(3中総会)を開き腐敗対策を討議するが、権力闘争も絡んで、有効な対策は打ち出せそうもない。昨年秋に成立したばかりの習近平(党総書記・国家主席)政権には、試練の秋になりそうだ。
●習氏の指導力に限界
習政権が昨年末に開始した腐敗撲滅キャンペーンは、今年2月の「トラもハエもたたく」宣言で、さらに強化されるかに見えた。が、これまでに摘発されたのは中堅幹部十数人にすぎず、前政治局常務委員の周永康氏ら疑惑の大物政治家の捜査は進展していないもようだ。そもそも習氏の反腐敗運動は、同じ太子党(党高級幹部の子弟グループ)に属し、反腐敗と毛沢東賛美を背景に大衆の熱狂的支持を受けた薄熙来・前重慶市党書記の人気にあやかりながら、薄氏を裁判にかけ、彼の腐敗を暴露、弾劾するという矛盾した動機に発している。その結果、薄氏の裁判日程にも影響した。
薄熙来氏の公判は8月22日に山東省で開かれたが、早期開廷を求める胡錦濤(前党総書記・国家主席)派と、それに反対し来年への持ち越しを主張する江沢民(元党総書記・国家主席)派の綱引きの結果だったという。習氏は反腐敗運動を徹底し、成果を生んでから開廷したかったようだが、胡錦濤派に押され、早期開廷を受け入れた。こうしたいきさつからは習近平氏の指導力の限界が浮かび上がる。
●史上最悪の汚職国家
14億近い人口の0.4%が国民総資産の7割を占めるという中国は極端な格差国家であり、人類史上最悪の汚職国家である。そこでは、汚職や不正と無縁な人は皆無と言ってよい。
例えば約200人の党中央委員のうち、欧米などに子女を留学させているのは90%以上で、その大半が海外に預金口座を持ち、複数の国の旅券を所持している人も珍しくない。中国の現状や将来に不安を持つ中国人は競って海外への脱出のチャンスをうかがい、高級官僚や政治家たちは様々な方法で不正蓄財に励み、自宅などに隠したり、海外に送金したりしている。最近の報道では、1990年代半ば以降に海外へ逃亡した官僚、国有企業幹部は1万6000~1万8000人、流出した国有資産は800億元(約1兆2800億円)に上るという。
王岐山党中央規律検査委主任は最近、広範な綱紀粛正令を発したが、贈答用月餅の禁止など、どれも細かい話だ。腐敗撲滅には、所得の透明性を高める資産公開法の制定や、野放しになっている相続税、贈与税など資産課税制度の創設が急務だ。資産公開法は毎春の全人代で検討課題になりながら先送りされ、制定の見通しは当面ないという。腐敗の根源は共産党独裁である。IT(情報技術)の発達で独裁維持はますます難しくなっているが、汚職官僚たちにとっては国の将来などどうでもいいのかもしれない。(了)