公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

【第247回】曖昧な政府の対応が慰安婦問題を招いた

目良浩一 / 2014.05.19 (月)


歴史の真実を求める世界連合会総裁  目良浩一

 

 慰安婦問題は、今や米国やカナダ、オーストラリアなどを舞台に、日本国を貶める重要な武器として、韓国によって使われているが、最近では中国系の人々もそれに加担してきている。中国系の組織が主体となって韓国系の組織を動かしていると見た方が正しいかもしれない。私は米カリフォルニア州グレンデール市に設置された慰安婦像の撤去を求める訴訟を今年2月に起こした原告の一員であるが、その経験から、慰安婦問題をめぐる日本政府の今までの行動様式に大きな不満を抱いている。

 ●慰安婦像撤去訴訟で中国系組織が暗躍
 私が代表を務める「歴史の真実を求める世界連合会」(GAHT)は2月20日、グレンデール市を相手取り、慰安婦像の撤去を求める訴訟をロサンゼルス連邦地裁に起こした。市が慰安婦像の設置を許可したのは連邦政府の外交権限を侵し、米国憲法に違反することなどを根拠にした。
 ところが4月に入って、我々に弁護士を提供していた米国の大手法律事務所メイヤー・ブラウンが訴訟から降りるという予期せぬ事態が起きた。その直前に米有力ビジネス誌フォーブスが訴訟を批判する評論を掲載し、原告の弁護を続ければ顧客であるシリコンバレーの大企業が離反しかねないというのが撤退の理由だった。我々は法律事務所を変えることを余儀なくされた。
 訴訟には、中国系米人組織も介入してきた。カリフォルニア州に本部を置く「世界抗日戦争史実維護連合会」(抗日連合会)が、日本政府は慰安婦問題で責任を認めているとの意見書を地裁に提出したのである。この組織がメイヤー・ブラウンに圧力をかけ、訴訟から手を引かせた疑いもある。

 ●謝罪先行の事なかれ主義
 日本が慰安婦問題で防戦一方の状況に陥っているのは、ひとえに日本政府の対応の不明瞭さと事なかれ主義に原因がある。戦時中に山口県で労務調達に従事した吉田清治氏の1983年の著書を発端に、奴隷狩りのような慰安婦強制連行が行われたとの認識が日韓両国で定着すると、時の首相は事実関係をろくに調べもせずに韓国に謝罪した。
 日本政府はそれから資料を丹念に調査し、日本の官憲が女性を強制連行した事実が見つからなかったにもかかわらず、組織的な強制連行があったと解釈できるような談話を河野洋平官房長官が発表した。河野談話を訂正する機会はその後何度も訪れたのであるが、その時々の首相や外相が勇気を持って対処しなかったために、傷をますます拡大させてしまった。
 日本政府の事なかれ主義は、韓国が主張する慰安婦のイメージを英語圏全体に流布させることになり、我々の訴訟にも悪影響を与えている。
 諸悪の根源は河野談話にある。安倍晋三政権は、談話の検証に当たっては徹底的に事実を洗い出し、他国の思惑にとらわれずに正確な情報を公表すべきである。そうでなければ、日本人の汚名は今後数世紀の間残り、我々の子孫は悩み続け、先祖を恨むのである。(了)