公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

島田洋一

【第253回】慰安婦問題で米知日派に呼び掛ける

島田洋一 / 2014.06.30 (月)


国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一 

 

 6月25日、在韓米軍相手の売春施設で働いていた女性ら122人が、「韓国政府の厳しい管理下で、強制的に米軍の相手をさせられた」「政府は基地村(売春街)の米軍慰安婦制度の歴史を謝罪し、法的責任を果たす必要がある」と主張し、国家賠償訴訟を起こした。
 韓国政府による「管理」の実態ははっきりしないが、施設の基本的性格は旧日本軍の慰安所と同じである。韓国政府や米政府が「米軍慰安婦」をも「性奴隷」と呼ぶならともかく、日本軍の慰安婦のみをそう規定するのは明らかに不当である。

 ●米が反論することは日本も反論する
 日本については、「20万人の少女を強制連行した」というさらに不当な虚偽宣伝まで上乗せされてきた。国基研の「直言」は英語でも発信されるので、以下、米国の友人たちに語り掛けるスタイルで書いてみよう。
 さて、仮に韓国側が今後、米軍慰安婦は米軍主導による少女たちの性奴隷化だったと主張し始め、そこに職業的詐話師が現れて自虐的な虚報を流布し、事なかれ主義のホワイトハウスと国務省が謝罪談話を出す展開になったとしましょう。それで一件落着かと思いきや、韓国側は第三国の公園に次々と「米軍慰安婦少女像」を建て、国連演説で米国の無反省を批判するなど言動をエスカレートさせてきた。あなた方はどうしますか。米国のまともな大統領なら、謝罪談話を見直し、反論するでしょう。
 ではなぜ、同じことを安倍晋三首相や日本政府がしてはならないのか。もし、日本の知米派が「米国は謝罪談話を見直すべきでない」などとアドバイスしたら、あなた方は苛立ちを覚え、さらには怒りさえ感じるでしょう。

 ●「歴史問題はコメントせず」という知恵
 慰安婦募集の強制性を認めた1993年の河野洋平官房長官談話を見直すなという著名な米国の知日派の発言に接するたびに、少なからぬ日本人は同じ思いを抱いているのです。そのことに気付かないとしたら、あるいは日本軍における慰安婦制度は「残虐性と巨大さにおいて前例を見ない」組織的性犯罪であるという途方もないフィクションを信じているとしたら、そもそも知日派の名に値しないでしょう。積極的に日本の主張に賛同してくれとは言いません。「日韓の歴史問題にはコメントしない。未来に向けた協力の話をしよう」、それだけでいいのです。
 外務省のエリート官僚やOBから得た感触を基に日本の動向を測ると間違います。では、日本を正しく知るには何を参考にすればよいのでしょうか。米国の友人たちには、この国基研の「直言」を取りあえず毎週読むことを勧めます。(了)