公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

西岡力

【第252回】河野談話検証の茶番劇

西岡力 / 2014.06.23 (月)


国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力

 

 戦時中の慰安婦募集の強制性を認めた1993(平成5)年の河野洋平官房長官談話の作成経過などに関する有識者チームによる日本政府の検証報告が20日公表された。それを読んで、腹が立って仕方がない。談話の文言に干渉したとされた韓国に対してではない。慰安婦問題によって日本国と日本の先人の名誉が著しく傷つけられた原因の一翼を河野談話が担っているにもかかわらず、わが国の外務官僚は自分たちの行った外交の失敗を一切認めようとしていない。その無責任さとずるがしこさに腹が立ってならないのだ。

 ●検証すべきは謝罪外交の失敗
 今回の検証は、河野談話の作成過程で韓国と文言を協議した疑いが国会で提起されたことから始まった。河野氏や内閣外政審議室長だった谷野作太郎氏ら談話作成の責任者はそのような事実はないと強弁してきたが、今年1月、産経新聞が政府内の記録から日韓の協議は
あったとスクープし、野党が政府を追及したことから、政府は事実関係の検証を約束した。
 ところが、公表された検証結果には、河野、谷野両氏らがウソをついていたのかどうかという核心部分への言及は全くない。韓国が無理な要求をしてきたが、日本政府は最低限の譲歩をしつつ事実を曲げなかったという自己正当化としか読めない文章が羅列されているだけだ。
 その上、国会で問題にならなかった「アジア女性基金」による元慰安婦への「償い金」支給をめぐる日韓政府のやり取りも検証の対象とされ、日本は誠実に寄付を集め元慰安婦に渡そうとしたが、韓国政府が方針を行ったり来たりさせたためうまくいかなかったかのような記述に終始している。
 真に検証すべきは、1992年1月の宮沢喜一首相の訪韓以降、93年の河野談話、95年から2002年まで活動したアジア女性基金で一体何について謝罪したのか、その結果、日本の名誉は守れたのか、である。
 宮沢首相は訪韓で8回謝罪したが、その時点で慰安婦強制連行があったのかどうかを日本政府は調査していない。日韓の世論が反日勢力に煽られて激高したから、その場しのぎで
謝ったにすぎない。調べもしないでまず謝罪するという、外務省が主導してきた謝罪外交は完全に破綻している。その過程をきちんと検証し、責任を明らかにすべきだ。

 ●首相直属の体制が必要
 それは日本内部の問題だ。外交の破綻過程を検証しないで、韓国が無理なことを言ってきたが外務省はそれなりに頑張ったという弁明は無益で有害だ。「性奴隷20万人」というウソ宣伝に効果的に対処できなかった理由と責任を明らかにする検証こそが求められている。そのためにも、日本の名誉を守る政府内の専門部署を、外務官僚を排除した形で作ることが先決だ。拉致問題で担当大臣と対策本部が首相の直属で置かれている体制が参考になる。(了)