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西岡力

【第258回】和食とマンガでは反日宣伝に対抗できない

西岡力 / 2014.08.04 (月)


国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力 

 

 20年以上、外務省の謝罪外交を批判している筆者はたいていのことには驚かなくなっている。しかし、中韓両国の反日キャンペーンに対抗し、日本の存在感を高めるために、来年度予算で500億円を使って外務省が行おうとしている事業を知った時には、怒りと驚きが止まらなくなった。なんと、世界の主要都市に「ジャパン・ハウス」と称する拠点を建設し、和食、マンガ、ゲーム、音楽などを発信するというのだ。すでに外務省は「ジャパン・ハウス」第1号としてロンドンで用地購入の調整に入っているという。

 ●ピント外れの日本売り込み策
 和食、日本のマンガ、ゲーム、音楽などはすでに商業ベースで世界に広がっており、高い評価を得ている。反日キャンペーンを行っている中韓両国にもそれらは広く普及している。いまさら外務省が税金を使って後押しする必要はない。
 安倍晋三首相は自民党総裁選挙や総選挙の公約等で、内外の反日勢力の中傷にきちんと反論すると約束した。しかし、領土問題での対外発信の強化、慰安婦問題に関する河野談話の検証以外に、この分野で目立った実績はない。
 官邸で広報を担当している世耕弘成官房副長官の下で、約8000万円をかけて日本の書籍100冊の英訳事業も開始されたが、やはり「文学、自然科学、技術」分野のものが対象となるという。
 これとは別に、自民党は3月に国際情報検討委員会を設置して、慰安婦像の設置、日本海の呼称変更要求、首相の靖国神社参拝への批判、伊藤博文を暗殺した安重根の記念館開設など、中韓による反日宣伝への対応を検討したが、6月に出された「中間とりまとめ」によると、外務省が管轄する日本国際問題研究所の強化、世界の政治指導者や財界リーダーが一堂に会するダボス会議の日本版の開催、NHK国際放送の英文字幕化などが提案されただけだ。外務省などの予算は増えるだろうが、こうしたことをいくら行っても反日キャンペーンの克服にはほとんど役立たない。

 ●事実に踏み込んだ反論が急務
 今しなければならないのは、慰安婦問題をめぐる「セックススレーブ(性奴隷)20万人」や「南京虐殺30万人」などという事実無根の中傷が世界各地に広まっていることに対して、事実関係に踏み込んだ実証的で論理的な反論を官民挙げて展開することだ。特に、英文での反論を大々的に行うことと、国連人権理事会の様々な会議で日本人活動家たちが韓国人、中国人らと共闘してウソを広めていることに対して早急に組織的な対策をとることが急務である。
 ジャパン・ハウス建設は安倍首相の強い意向だとの報道(読売新聞7月28日)もあるが、本当にそうなのか。国際社会へ反論すべしという首相の意向を外務省が悪用しているのではないかと強く疑うものだ。国会は予算審議で、ジャパン・ハウスで反日宣伝に対抗できるのか、厳しく問いただして欲しい。(了)