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洪熒

【第358回】 韓国が対北・対中政策を根本的に見直し

洪熒 / 2016.02.15 (月)


国基研客員研究員・元韓国駐日公使 洪熒

 

 韓国政府は、北側が2月7日に事実上の大陸間弾道ミサイル(ICBM)である長距離ロケットを発射するや、直ちに米国と高高度防衛ミサイル(THAAD)配備のための協議を始めると発表した。そして、3日後、南北経済協力の象徴だった開城工業団地の稼動を全面的に中断した。開城工団を通じて北に流入するドルが核とミサイルの開発に使われているからだ。北側も翌日、開城工団を閉鎖し軍事統制区域にすると宣言した。
 韓国はここ20年以上、国連や「6者協議」などを通じて北の核武装を阻止しようとしてきた。だが、外交努力は失敗した。韓国は北側の核ミサイルの実戦配備が迫った今になってようやく自力で対応するしかないことを自覚した。韓国は対北政策と対中政策を根本的に変えざるを得ない状況になったのだ。

 ●THAAD配備の決断
 韓国のTHAAD配備決断は中国に対する失望と不信に起因する。もちろん、朴槿恵大統領を一連の決断に追い込んだのは金正恩体制と北側を庇護してきた中国共産党だ。朴大統領は中国の役割をこれ以上期待するなと言ったそうだ。
 中国は韓国のTHAAD配置に強く反対する。ロシアも反対する。韓国の国家安全保障を全く無視し、否定する態度だ。東アジアの国際秩序が冷戦構図に戻った。
 韓国が北側の核の脅威から生き残るためには、韓国も相応の核抑止力を持つか、金正恩体制を打倒するしかない。周辺国は韓国の立場に同意するだろうか。
 中国は北側の核武装の抑制よりも「韓半島の非核化」を強調し、韓国の対応を牽制してきた。中国は平壌の暴走の責任を米国に転嫁している。韓国に対する中国の要求と態度は、韓米同盟を破綻させ、自分が韓半島の宗主国になろうという野心を表している。そして中国と平壌側は韓米同盟を弱体化し、破綻させるという戦略的目標を共有している。
 金正恩体制は唯一の戦略資産である核兵器を決して放棄しない。北側は核保有国であることを既成事実化しながら、中国と一緒に韓国の対応努力を牽制し、韓米同盟と韓米日の連携を弱体化させるプロパガンダや戦術を駆使するだろう。

 ●NPT脱退を宣言せよ
 では、韓国が米日と協力して北側の核戦略を無力化し、「韓半島の核のゲーム」の主導権を中国・北側から奪うにはどうすれば良いか。それは、韓国が核拡散防止条約(NPT)から脱退を宣言することだ。NPT第10条は脱退の権利を認めている。尋常でない時代には尋常でない決断が避けられない。
 核武装国に対して非核で対応するという「道徳的優位論」は現実の世界では通用しない。力をもって現状変更に出た中国と北側を抑えるためには、こちらも相応の力が必要だ。東アジアでも冷戦時代の「核の恐怖による均衡」が必要になったのだ。
 米国は憲法で銃器の所持を保障する国だ。同盟国の自衛のための核武装を止められるはずがない。日本も韓国の努力を支援すべきだ。そうしてこそ中国・北側から「東アジアの核ゲーム」の主導権を奪うことができる。(了)