昨年末の日韓合意に基づき、韓国政府は7月28日、元慰安婦を支援する「和解・癒やし財団」を発足させた。発足式では合意反対派の運動家が抗議行動に出て、理事長に就任した金兌玄・誠信女子大名誉教授に唐辛子成分を浴びせる騒動を起こした。
挺身隊問題対策協議会(挺対協)をはじめとする合意反対派は「当事者の意思を排除した財団発足に反対」とのスローガンを叫んだ。しかし、日韓合意と財団による元慰安婦への金銭的支援に対して、80%近くの元慰安婦が支持を表明していることが分かった。
●成功しつつある韓国政府の説得
29日、韓国CBSラジオのニュース番組で、鄭炳元・外務省東北アジア局長は次のようにその詳細を語った。
「昨年末の時点で46人の生存者がいた。金理事長は団体の中にいる一部を除いた37人前後とその家族に会って、合意の意義と財団の事業方針を説明した」
「多くのおばあさんが、①政府がしたことに従う②満足ではないが、生きているうちに解決したい③財団を早く設立して事業をしてほしい―と表明した」
「全ての元被害者が合意に反対しているという一部団体の主張は事実と異なる。70%以上、80%程度が賛成の立場を示した」
韓国政府はこの間、日本が出資する10億円は財団の維持運営に使わず、全額、元慰安婦への支援に使うと表明してきた。
1995年に村山富市政権がアジア女性基金を設置した際、元慰安婦は日本からの支援金を拒否する代わりに、挺対協などが韓国政府に圧力をかけて出させた同額の支援金を受け取った。だから、元慰安婦の大部分は挺対協から離れなかった。
しかし、今回、韓国政府が作った財団からの支援を拒否すれば、韓国政府から別途カネは出ない。挺対協が政府に対抗して作った財団には約1億円しか募金が集まらなかった。
元慰安婦の1人は毎日新聞(6月18日付)に対し、癒やし財団からの支援金を賃貸住宅の「保証金」にしたいと述べ、「そこで暮らし、死のうと思う」と語った。また、ソウルの日本大使館前の慰安婦像について「韓国政府は自分たちのものではないと言っているし、また私たち(元慰安婦)のものでもない。民間団体が設立したものだから(ソウル中心部の別の場所である)南山に移したらよい」と語っている。
●日本は10億円拠出を急げ
私は日韓慰安婦合意について、①韓国政府が、北朝鮮とつながって日韓関係悪化を目的に活動している挺対協などの反対を押し切り、今後、慰安婦問題を外交に持ち出さないと決断したことは評価できる②国際社会に拡散した「性奴隷20万人」「強制連行」などの誹謗中傷をなくすことが今後の課題だ―と主張してきた。
その立場からすると、韓国政府が挺対協から約8割の元被害者を切り離すことに成功した今こそ、日本政府は10億円を約束通り支出して、多数の元被害者の手元に現金が届くように韓国政府を支援すべきだ。それが実現すれば、挺対協の力は急速に低下し、慰安婦像を財団が造る慰安婦追悼施設に移転することも可能となろう。挺対協の力を弱めることは日本の国益にかなう。(了)