アジアの平和のためには積極的な日本が必要だ。日本の今日的な課題は、平和至上主義を保持すべきかどうかではなく、地域問題や国際問題に対し、悠長で、受け身のままでいられるかどうかである。日本は、アジアの力の均衡を保つために相応の軍事力を持ち、インド・太平洋地域の友好国と連携することで、平和への積極的貢献者になるであろう。
●中国からの挑戦
自衛と地域安全保障のためにより大きな責任を果たす自信を強めた日本こそ、米国の安保上の利益にも合致する。だが、日本が責任を果たすための安保体制の見直しは、憲法の見直しと結びつく。この双子の見直しは、米国のアジア・太平洋戦略の中心的な目標である安定した力の均衡を支える柱となろう。
日米同盟は自己主張を強める中国からの新たな挑戦に直面しており、その象徴こそ、南シナ海における中国の領有権主張の拡大であり、中国の主張を退けた仲裁裁判所判決を無視する中国の態度である。アジアでじわじわと進む中国の侵略は、東シナ海からヒマラヤまで戦略的な地域と資源のコントロールを広げることを企図する「力は正義なり」という中国の戦略の表れである。
積極的な平和への貢献は、安倍晋三首相が広めた理念である。先の参院選で改憲発議に必要な勢力を獲得したにもかかわらず、国内護憲派と中国の反発を予想する首相は慎重姿勢を崩していない。そもそも、第2次大戦後、世界で最初の平和至上主義の憲法を日本に押し付けたのは米国であり、そのために自衛隊の対外活動が厳しい制約下に置かれるという憲法上の困難をもたらしてしまった。米国こそ問題解決の役割を負うべきである。
●待たれる米国の支持表明
日本の憲法は、その他にも様々な欠陥を内包している。例えば、日本のような古い歴史のある国には、独自の文化、政治的伝統、国柄などに合った憲法が必要だ。だが、現憲法に盛り込まれている理念は、米独立宣言やリンカーン大統領のゲティスバーグ演説がたたえる自由や人権である。また、天皇については元首の規定がなく、日本国と国民統合の象徴であるとしか明記されていない。一方、日本と同様、古い文明と民主主義の国、インドでは、現憲法の公布(1949年)からすでに100回も憲法を改正している。日本は、憲法原理主義ともいえる反対のために、一字一句の修正さえ行っていない。
日本では国防や対外安保活動に対する懸念が強いが、米国が改憲支持を率直に表明すれば、国民の懸念を和らげることが出来よう。しかし、日本がアジアの新たな挑戦を受けているにもかかわらず、戦後体制や政策の改革を進めることに失敗すれば、日本は自らの安全保障を損なうだけでなく、戦略的日米同盟をも弱体化させるだろう。(了)