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石川弘修

【第425回】トランプ演説への高い評価は長続きしない

石川弘修 / 2017.03.06 (月)


国基研理事兼企画委員 石川弘修

 

 トランプ米大統領は2月28日の米上下両院合同会議で初の施政方針演説を行い、米国精神の再生をスローガンにテロ対策の強化や経済活性化を訴えた。それまでの過激な主張を抑制し、将来に希望を抱かせる楽観的なメッセージを発信したことで、一般国民から高い評価を得た。日ごろトランプ政権に批判的なCNNテレビが演説直後に行った緊急世論調査では、視聴者の78%が「好感を抱いた」と回答した。だが、この評価、いつまで続くのか。

 ●大盤振る舞いは早晩行き詰まりか
 演説の中で注目したいのは、米国が「真実、自由、正義」のたいまつを引き継いでおり、強靭で有意義な形で世界に関与すると述べたことだ。それまで米国の価値観についてほとんど語ることがなかっただけに、同盟国は多少なりとも安堵したのではないか。また、同盟国の責任や役割分担に言及しながらも、北大西洋条約機構(NATO)への支持を明確にしたことが関係国から歓迎された。
 しかし、この評価が長続きするとは思いにくい。大統領は演説の中で、米国防支出の10%増や、社会基盤(インフラ)整備への1兆ドル(約113兆円)の投資、さらに大型減税を実施するとうたい上げたが、その原資をどう捻出するのか。通常、議会演説で個々の政策の実現方法に細かく言及することはないとしても、大盤振る舞いは早晩行き詰まる可能性がある。また、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に加え、世界貿易機関(WTO)を無視するような主張は保護貿易主義を助長することになり、長期的には米国民への不利益となって跳ね返る恐れも強い。

 ●ますます重い日本の責任
 トランプ政権を誕生させたポピュリズム(大衆迎合主義)。当然のことながら、主役となった白人労働者などの利益擁護は重視される。国際的考慮や、政策の軽重、優先順位をめぐり、閣僚間や議会との対立、混乱が予測される。昨年の大統領選挙でヒラリー・クリントン候補を応援して敗北したリベラル系の大手メディアは、トランプ大統領への批判を一段と強める構え。今後の政局は波乱含みである。日本としては、世界の秩序やルールを守る役割を米国だけに頼るのではなく、自らの責任分担という意識をさらに強めて臨まねばならない。(了)