公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

西岡力

【第492回】北朝鮮の五輪参加は文政権の裏切り

西岡力 / 2018.01.22 (月)


国基研企画委員・麗澤大学客員教授 西岡力

 

 2月9日から韓国の平昌で開催される冬季五輪に北朝鮮が参加することが決まった。韓国の文在寅政権が主催国の特権で北朝鮮へのえこひいきを押し通した結果だ。アイスホッケー、スキー、スケートの3競技10種目に北朝鮮選手22人の参加が認められたが、フィギュアスケートのペア以外は出場資格を獲得していなかった選手ばかりだ。日本を含む競技関係者から不公平だとの批判が出ている。
 また、南北合同チーム結成が認められた女子アイスホッケーでは、北朝鮮選手12人が韓国チームに参加する。予選を通過できなかった北朝鮮の選手が特例として参加できることになり、自力で予選を通過した韓国チームの監督や選手らは困惑を隠せずにおり、韓国内でも文政権の北朝鮮優遇に批判が高まっている。

 ●国旗なき合同行進に批判
 韓国内で批判が強いのは、開会式に主催国韓国の代表が国旗「太極旗」を持たず、「統一旗」なる奇妙な旗を掲げて北朝鮮代表と合同行進をすることだ。保守派のリーダー趙甲済は以下の如く文政権を批判している。
 「自国内で国旗を降ろすのは、敵軍に降伏するか国がなくなった時だけだ。韓国が主催する平昌五輪の開幕式で韓国選手団が太極旗を持てないようにした者は、国家反逆者ではないかと疑わなければならない。大韓民国の地位をおとしめようとする、即ち20世紀最高の成功を遂げた大韓民国を反人類犯罪集団である北朝鮮政権と同格に引き降ろそうとする狙いだと見るのが正しい」
 北朝鮮が平昌五輪に参加する狙いは明白だ。独裁者金正恩が2018年の「新年の辞」できちんと述べている。
 「今のように戦争でもなく平和でもない不安定な情勢が持続したのでは、北と南が予定されている行事(平昌五輪)を成功裏に執り行うことができないばかりか、対座して関係改善の問題を真摯に論議することも、統一に向けて真っ直ぐに進むこともできない」
 このまま韓国が米国とともに対北朝鮮包囲網に加わり続けるなら、平昌五輪を妨害すると脅しているのだ。
 「南朝鮮当局は、全同胞の運命とこの地の平和と安定を脅かす米国の無謀な北侵核戦争策動に加担して情勢を激化させるのではなく、緊張緩和のためのわれわれの誠意ある努力に応えなければならない」
 米国が北朝鮮の核ミサイル開発をやめさせるために行っている軍事圧力強化に加担するな、北朝鮮と協力して米国と対抗せよ、と呼び掛けたのである。

 ●韓国が米原潜の寄港拒否か
 文政権はこの呼び掛けに応え、特例を認めて北朝鮮を五輪に参加させた。米国の原子力潜水艦の釜山寄港も五輪開催地に近いという理由で拒否したと韓国紙が伝えた。それらだけでも重大な裏切りだ。今後、米韓軍事演習を縮小させたり、国連制裁を破って北朝鮮へ経済支援を与えたりするかどうか、厳しく監視する必要がある。(敬称略)