公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

太田文雄

【第491回】中国軍の活発な行動を警戒せよ

太田文雄 / 2018.01.15 (月)


国基研企画委員 太田文雄

 

 中国人民解放軍海軍の潜水艦が11日に沖縄県尖閣諸島の大正島周辺の接続水域を潜行したまま航行した。フリゲート艦も随伴した。最近の中国は広域経済圏構想「一帯一路」に日本を取り込みたいためか微笑外交を重ねてきたが、一方で尖閣の領有を企図した軍事行動を活発化していることに我々は目をつむるべきではない。
 今回の航行目的の一つは、日本の潜水艦探知能力を試すことにあり、探知されなければ次は領海侵入まで計画した可能性がある。気付かれた場合でも、今回中国外務省が行ったように開き直って「尖閣は中国の領土なので海上自衛隊の艦艇2隻を追尾、監視した」と、国際社会に領有権主張をアピールする政治的意図も有していたように思われる。

 ●米軍射爆場だった大正島
 米国は、中国が尖閣諸島の主権を主張し始めた1971年以降も、今回潜水艦が接近した大正島と久場島を米軍射爆場として使用してきた。米国が中国の主権下にある島を射爆場として使用することはあり得ないので、当時、尖閣諸島の主権は日本にあると認識していたことは間違いない。
 1978年以降、米軍から日本政府への使用通告はなく、使用は中断された。同年12月、米中両国が外交関係樹立で合意する前に、中国側から何らかの働き掛けがあったと考えるのが自然であろう。
 実は、韓国が不法占拠する島根県の竹島も、米軍射爆場に指定された時期があった。1952年1月、当時の李承晩韓国大統領は、国際法を無視して漁業を独占する「李承晩ライン」を日本海に一方的に引き、領有を主張する竹島をその中に取り込んだ。しかし、同年7月、米政府は竹島を米軍射爆場として使用することを日本政府に申請した。竹島を日本領と認めていた表れである。
 1960年4月、当時のマッカーサー駐日米大使(連合国軍司令官だったマッカーサー元帥の甥)も本国宛てに、①李政権は日本の領土と認識されてきた竹島を不法占拠している②我々は竹島を日本に返還するよう韓国政府に圧力をかけるべきだ③最低限でも国際司法裁判所への付託に韓国が同意するよう主張すべきだ―と打電していた。

 ●尖閣失えば沖縄全部を失う
 大正島を再び射爆場として使用するよう米国に働き掛けてみたらどうか、と考えることがある。もし射爆場としての使用を再開すれば、米国は日本の領有を事実上認めることになる。
 しかし、米国は尖閣諸島の帰属をめぐり中立の立場だから、射爆場としての使用を再開することはありそうにない。そもそも、米国を頼りに日本の領土を保全しようとするのは、独立国として恥ずべきことだ。自国の領土を守るのは日本の責任である。
 問題は、尖閣を中国に渡せば良いという意見が日本の左翼知識人の一部にあることだ。我々は、ドイツの法哲学者ルドルフ・フォン・イェーリングの「領土の一部を失って黙っている国民は領土の全てを失う危険を負う」という言葉を想起すべきである。中国は尖閣を奪取した後、沖縄本島に触手を伸ばすことは明白なのであるから。(了)