公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

【第48回】米韓軍事演習に自衛隊も正式参加を

h0330 / 2010.07.26 (月)


国基研企画委員 潮匡人

25日から28日まで、日本海上で米韓合同軍事演習が実施される。23日、防衛省海上幕僚監部は、この演習に、海幕防衛部の一佐ら海上自衛官4人をオブザーバーとして参加させると発表した。この意味について考えたい。

なぜ「オブザーバー」なのか
今回の参加は「北朝鮮に対して日米韓の緊密な連携をアピールする狙いがある」(23日付毎日夕刊)という。海上自衛官は米空母「ジョージ・ワシントン」に乗り込み、艦上で訓練状況を視察する。北への「アピール」に加え、自衛隊が得る軍事的な知見が持つ意味も大きい。「北朝鮮側の反発を招くことも予想される」(同)なか、参加するのだ。

しかし、彼ら海上自衛官は、訓練に直接参加はしない。同乗し、視察するだけだ。文字通り「傍観者(オブザーバー)」に過ぎない。なぜ、正式参加しないのか。

そもそも今回の演習は、米韓両軍が「北朝鮮の挑発的行動を抑止する」目的で実施される。北による韓国海軍哨戒艦「天安」撃沈事件への対抗措置であろう。その第1弾となる今回の演習は、事件が起きた朝鮮半島の西側(黄海)ではなく、東岸沖の日本海で実施される。中国が自国に近い黄海での演習に反発し、対艦ミサイル発射訓練を実施した経緯などに配慮したのであろう。米韓の対中姿勢に疑問は残るが、結果、演習は「日本海」で実施される。にもかかわらず、日本は正式参加すらしない。

直ちに海自P3Cを派遣せよ
撃沈事件を念頭に「北朝鮮の挑発的行動を抑止する」なら、最大の抑止力を持つのは対潜哨戒機である。上空から水面下の潜水艦を発見・追尾、必要なら撃破する能力を持つ。海上自衛隊はP3Cオライオンを中心に、対潜哨戒機を100機近く保有する。最新鋭の哨戒機P1も実用試験中だ(飛行実験に成功)。案外知られていないが、海上自衛隊の対潜能力は世界最高レベルを誇る。海自の哨戒機が参加すれば、世界最大級の抑止力が整う。なぜ海自哨戒機を派遣しないのか(もし、調査研究名目などで飛ばすなら、それこそ「なし崩し的改憲」ではないのか)。

以上の措置を阻んだのは、集団的自衛権の壁である。昨年の総選挙前に作成された「民主党政策集INDEX2009」は「これまでの個別的・集団的といった概念上の議論に拘泥せず」と明記した。ならば、今回こそ従来の議論から脱却すべきではないのか。最大級の能力を持ちながら、指をくわえて「傍観」する。このまま「概念上の議論に拘泥」すれば、日本が沈む。(了)

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第48回:米韓軍事演習に自衛隊も正式参加を(潮匡人)