国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力
民主党が教育内容不問を了承
民主党は7、8日の2日間、朝鮮学校を「高校の授業料無償化」の対象として国費で支援すべきかどうかを論議し、「教育内容は問わず、学校の形式などで判断する」という基準を了承した。
教育基本法第2条は、教育の目標の一つとして「他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」を挙げているが、朝鮮学校の教育はそれに違反する疑いが大きい。
国費支援反対論は、朝鮮学校を廃校にせよと要求しているのではない。支援するなら最低限、日本の法令が定める教育の目標に反する教育をしているかどうかチェックせよと求めているのだ。民主党には国民の常識が通じないのかと強く思う。
会議は文科部会と拉致問題担当部門の合同で開催され、30~40人の議員が出席したが、教育の中身についても判断基準にすべきだと主張したのはわずか3人ほどで、差別反対、子どもをいじめるな、などという発言が大多数だったという。そのため、当初は外部専門家や朝鮮学校校長などからの意見聴取も検討されていたが、それをせずに了承することになった。
秘密会議の結論を追認
高校の授業料無償化は4月から実施されたが、外国人学校の中で朝鮮学校だけ実施が留保され、文科省に専門家会議を作って8月末までに判断することになった。ところが、専門家会議のメンバー、審議内容がすべて秘密とされた。教育行政などの専門家ばかりで、朝鮮問題や、朝鮮総連と朝鮮学校の実態に関する専門家は入っていないという。その秘密会議の結論を民主党が追認したのだ。
朝鮮学校では拉致問題について「日本当局は《拉致問題》を極大化し、反共和国、反総連、反朝鮮人騒動を大々的に繰り広げることで日本社会には極端な民族排他主義的雰囲気が醸成されていった」(現代朝鮮歴史3)と、あたかも自分たちが被害者であるかのような教育を実施しており、国費で支援すれば拉致問題解決の妨げになると拉致被害者家族らが反対の声を上げた。
地方では既に年9億円の補助
政府は1965年に通達を出して、朝鮮学校は各種学校として認可するのにふさわしくない、としていたが、認可権を持つ都道府県知事が60年代後半から70年代にかけて認可を強行した。その後、自治体レベルで朝鮮学校への公費による支援が始まり、28都道府県と13市区町村から合計9億1000万円(平成15年)という多額の補助金が出されている。(産経新聞平成17年2月16日)。
今回の論議の中で、橋下徹大阪府知事と石原慎太郎東京都知事が、朝鮮学校への公的補助には教育内容に踏み込んだ検討が必要だと明言した。税金で支援するなら教育内容のチェックは必要だという当たり前の議論が、国政だけでなく地方レベルでどれくらい広がっていくかが次の焦点となってきた。(了)
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第55回:国民の常識に反する朝鮮学校支援決定(西岡力)