公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

有元隆志

【第1001回】変貌する日米同盟、日本の役割増す

有元隆志 / 2023.01.16 (月)


国基研企画委員・月刊「正論」発行人 有元隆志

 

 バイデン米大統領は13日の日米首脳会談で、反撃能力の保有を含む日本政府の抜本的な防衛力強化を高く評価した。会談冒頭、バイデン氏は「日本による防衛費の歴史的な増額や新たな国家安全保障戦略によって、我々は軍事同盟を現代化している」と語った。「現代化(modernize)」は最近の日米同盟のキーワードとなっている。日本の役割が増し、同盟関係が変貌を遂げていることを示している。

 ●「近代化」から「現代化」へ
 「modernize」の使われ方でもこの10年の変化が見て取れる。2013年4月、ホワイトハウスはオバマ大統領(当時)が目指した米国の政策の軸足をアジア太平洋地域に移す「リバランス政策」を説明するファクトシートで、同盟を「modernize」すると述べた。冷戦期の米国中心の防衛体制から、同盟国がより積極的に役割を果たすよう促すためで、この場合の訳は、産業革命によって封建的な社会体制が大きく変化した「近代化」がふさわしい。
 日本ではその前年の暮れ、自民党の第2次安倍晋三政権が誕生した。安倍政権は限定的ながら集団的自衛権の行使を可能とする安全保障関連法制を整備するなど、同盟強化に取り組んだ。これを受け、英語では同じ「modernize」ではあるが、日米同盟は「近代化」から一歩進んで、今日直面している課題に対応し変革を進める「現代化」を目指すようになった。昨年1月の外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)後の共同発表でも「同盟を絶えず現代化し、共同の能力を強化する決意」が盛り込まれた。
 今月11日の2プラス2後の共同発表では「同盟の現代化」は項目として使われた。この中では「同盟の抑止力・対処力」「宇宙・サイバー・情報保全」「技術的優位性の確保」に関する日米協議を加速することが決定した。
 なかでも日本が新たに保有する反撃能力に関して「効果的な運用に向けて日米間の協力を深化させる」と明記し、台湾有事などに備え、より実戦を意識した内容となった。日米が自衛隊は専守防衛、米軍は他国への攻撃という「盾」と「矛」の役割分担に固定される関係ではもはやないということだ。

 ●課題は戦略の実行
 日本政府高官は「現代化というよりも同盟関係のtransformation(変革)のほうがしっくりくる」と語った。受け身であり続けた日本が積極的に同盟強化に取り組むことを示したのが、今回の2プラス2と日米首脳会談だといえる。
 今後はオースティン米国防長官が語ったように「戦略に息を吹き込む」、つまり戦略を実行することが何より重要であり、日本は気概を持って取り組むことが求められている。(了)