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田村秀男

【第1064回】中国の金融危機でリーマン級災厄の恐れ

田村秀男 / 2023.08.21 (月)


国基研企画委員・産経新聞特別記者 田村秀男

 

 中国の金融界が揺らいでいる。ノンバンク(非銀行系)の大手信託会社が支払い不能に陥ったからだ。習近平政権は危機深刻化を防ぐ手だてを持たない。最悪の場合、リーマン・ショック級の金融危機を引き起こしかねない。
 中国の中央銀行、中国人民銀行はすべての金融機関が手がける投融資を「社会融資総量」として分類している。日本円に換算すると、ノンバンク系は約2700兆円と巨額で、それだけでも日本の現預金と債券、信託や金融商品を合わせたカネの総量(「広義流動性」)の2121兆円(7月末)を大きく上回る。中核に位置するのが信託会社で、最大手級の中植企業集団(本社北京)とその傘下の中融国際信託(同ハルビン)が6月、7月の満期を過ぎても支払いを止めたままだ。

 ●誘爆しかねない「時限爆弾」
 習政権は中植などに関する報道を統制してきたが、8月11日に投資者側の株式上場企業3社が規定に従って情報を開示し、露見した。バイデン米大統領はその前日、支援者の集会で、中国経済を「チクタクと時が刻まれている時限爆弾」に例え、「悪い人々が問題を抱えると悪いことをするので、これは良いことではない」と警告していた。
 ホワイトハウスは何らかのルートで事前に事態を把握していたはずだ。国内金融規模をドル換算すると、2022年に38兆ドルの中国は米国の21兆ドルを圧倒する。そんな「金融超大国」の波乱は米国をはじめ世界に及ぶ。しかも、中融などを含む中植グループの財務を、米会計コンサルタント大手KPMGが7月中旬に急きょ引き受けた。
 「時限爆弾」とは言い得て妙だ。巨大な中国金融からすれば小さな「爆発」のようでも、「誘爆」の連鎖を導き、大規模な金融危機に発展する。2008年9月の米国発のリーマン・ショックは同年3月の中堅の米投資ファンドの破綻が導火線だった。住宅バブル崩壊の背景といい、中植・中融の金融トラブルはリーマン危機を彷彿させる。

 ●あり得るデフレ長期化
 習政権は危機の根底にあるバブル崩壊の進行を止められそうにない。決め手は中国人民銀行による資金の大量増発だが、限界がある。資金発行の原資である外貨の流入が激減している中では、人民元の暴落を招く危険があるからだ。
 中央銀行の資金増発なくしては財政出動のための国債増発もままならない。しかも、習政権の監視は大甘だ。国家金融監督管理総局は事態収拾を中植グループの判断に委ねたままだ。政府無策の中、金融危機だけが進行する。その場合、平成バブル崩壊後の日本がそうだったように、中国も長期デフレ不況局面に入るだろう。(了)
 
 

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バイデン発言「時限爆弾」は中国金融のこと。中国の不動産バブル崩壊が投資元の信託会社を襲う。投資規模8000兆円のうち3分の1はノンバンクで中核は信託会社。7月末に元利払いを停止し、8月に表沙汰に。中国経済の一角に信用不安が生じれば、デフレスパイラルの可能性が。対中依存は危険信号と認識すべし。